第8章 その3 バカの発想
ヴィンスがカサヴェテス達の前に立ち、声をかけた。
「大佐、聞きましたよ。とんでもないヤツらが居たみたいですね」
「あぁ、正直デカいとかげ達を見に行くくらいのつもりだったからな。あんな所で生きてる人間みたいなヤツがいるとはな」
ヴィンスは思い出した様に続ける。
「あ、カサヴェテス、バトラー両大佐がここの指揮を取って下さると聞いたので報告します。24時間体制で順番に警戒に当たっています。応援の皆さんがローテーションに加わってくれているので、個々の負担は少なくなって助かっております」
そう言ってバトラーに頭を下げる。
「ヴィンス、何を言っている。俺達はその為に来たんだ。いちいち頭を下げないで良い」
バトラーはそう言って笑ってみせた。
カサヴェテスが尋ねる。
「ところで日中、恐竜達は来たのか?」
「それがですね。今日は比較的涼しかったのに、『来客』は無かったんです。ヤツらもバカじゃないんで、あそこに行くのはヤバいと学習したのか、思った程、北側に恐竜が居ないのかはわかりませんが」
「そうか、それならそれが一番良いな」
そこに、エドワードが軽い足取りで近付いてきた。
「アーサー!! 中央委員会に連絡してくれ!!」
「エドワード、どうした? ご機嫌だな。お前のその感じは、またリアムと『良からぬ』事を考えてやがるな」
カサヴェテスが期待を込めて言った。
「あぁ、察しが良いな。このメモに書いてある物を最短で届けて貰うように、注文してくれ。説明は必要か?」
「いや、構わん。後で聞かせてくれ」
メモを受け取りながら、カサヴェテスが問う。
「アーサー、このロープと言う長さや太さに指定は無いのか?」
「あーすまん。直径12mmの物を予備も込みで100mほどだ」
カサヴェテスがメモに上書きをし始めた。
「直径12mm、100……」
万年筆を手のひらに置き、ハッとする。
(じいちゃん……) (空を操ったよ) (瞬く間に、すげー仲間が集まってきたよ) (言う通りだった。俺達は向こうでは地上を歩けない) (でもアイツらとなら、何か見えそうだ)
もう一度、万年筆を握り締めてじいちゃんのおとぎ話を思い出した。
我に返った様に、カサヴェテスは電話をしてくると言って、早速連絡しに行った。
「エドワード博士ー!!」
リアムが駆け寄ってきた。 こう言う時のリアムは、何か「おかしな」事を思いついた時なのは、これまでの経験で解ってきていた。
「どうした?? リアム」
「EXPの予備パーツ、いくつかありますよね?」
「あぁ、殆どの物は壊れたら復旧出来るように準備してある」
リアムは嬉しそうに続ける。
「な、るほどーーー。じゃあ、明日からの作業、少し大掛かりになります」
「どういう事だ?」
「多分、あそこのあの長さが足りないので、ここで補うんです。その為にここに、こうしてこれを足します。すると解決します」
エドワードが眉間をつまんでグリグリしてから言った。
「お前!! 本物のバカ(大天才)だな!!! 発想が独創的でぶっ飛んでるのに、最終的に『俺はこれしかない』と思わされてる。今回も同じだ」
エドワードは大笑いする。
バトラーとヴィンスが居るのにもかかわらず、リアムはすっかりこの場の空気を持って行っていた。
バトラーが微笑みながら言う。
「ヴィンス、俺はここに遠征に来れて本当に良かったよ。君達に会えたのが、この上ない収穫だよ」
ヴィンスはニカッと笑いながら答えた。
「でしょう!? うちのヤツら最高なんですよ!! でもね、貴方がたももう俺から見たら『うちのヤツら』です!」
それを聞いて、アルベルトが会話に入ってきてふっと笑う。
「ヤツら、ねえ」
ヴィンスはバツ悪そうにバトラーへ視線を送るが、バトラーは片眉だけ上げて、おかしそうに笑っていた。
アイアンクラウンEXP、改良版。
少しずつ迫り来る、「想定外」の攻略に向けて新たなイメージが、リアムの頭の中ではすでに完成していた。




