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第8章 その2 驚愕の事実 上回る好奇

ーードラゴノイド。

「アイツらね!馬型の恐竜を乗りこなし騎乗したまま立ち上がり、振り返りざまに槍を投げて、巨大な猫の前脚に的中させて……っ!」

ルーシーが熱を帯びた口調でそう語った瞬間、食堂の空気がピタリと静まり返った。その言葉の重みに隊員たちが息を呑んだまさにその時、――ガチャン、と重い足音が響く。

「なんだってーー!!」

護衛隊のローテーションを終えて食堂へ戻ってきたレオンが、興奮を隠しきれない様子で勢いよく扉を開けて飛び込んできた。

「50メートルの岩山の上に拠点を置いて、道具も扱う『腕だけ恐竜人間』だとーー!?」

「おわっ、レオン、ご苦労さん。……って、急に入ってきて驚かすな!!」 ヴィンスが思わず肩をビクッとさせながら抗議する。

「いやいやヴァンダイン少佐、驚いたのはこっちの方ですよ!!」 レオンは息を弾ませたまま、周囲の熱気を感じ取ってニヤリと笑った。 「まぁ、そうだな。俺たちも今、腰を抜かしかけてたところだ」 ヴィンスの言葉を皮切りに、食堂のあちこちからドッと笑い声が起き、一気に緊張がほぐれていく。

その喧騒の中、綺麗に平らげたトレーを持って、リアムが真っ直ぐにヴィンスたちのテーブルへと歩み寄ってきた。瞳には、先ほどまでの照れが嘘のように強い光が宿っている。

「ヴィンスさん。……今度は、俺たちと一緒に来て欲しいんです」

「えっ?」

ヴィンスは不意を突かれたように目を丸くしたが、すぐに表情を引き締め、ぐっと腕を組んだ。 「……しかし、俺たちはここを守らないとならないからな」

すると、エドワードが余裕の笑みを浮かべてグラスの氷をカランと鳴らした。 「そこは心配いらん。アーサーがバトラーと組んで、基地の指揮を取ると言っているよ」

その言葉に背中を押されるように、リアムが淀みなく続けた。 「次のフライトのメンバーは――俺、エドワード博士、ヴィンスさん、ハインリヒ大佐、レオンさん、ヴィクターさん、ルーシー。……それと、ガントです」

それを聞いたアルベルトは、すべてを見透かしたような、それでいて少年のような笑みを浮かべて口を開いた。 「そのメンツから察するに……君たち、何かとんでもないことを企んでいるな?」

リアムは隠そうともせず、満面の笑みで言い放った。 「もちろんです!! 岩山に直接着陸して、あの『ドラゴノイド』とのファーストコンタクトを試みます!」

ヴィンスはガクリと額に手を当て、深い溜息をついた。 「……まったく、俺たちの上官たちには困ったもんだなー。な、アルベルト」 「あぁ、ホントに、とんでもなく手のかかる人達だ」 そう言いながらも、ヴィンスとアルベルトの顔には隠しきれない好奇心とワクワクの色が滲み出ていた。

耐えきれなくなったようにレオンが拳を握りしめ、身もだえするように声を漏らす。 「うぉぉーーーー!! すげぇ! やばいぞ、それ……!」

そんな大人たちを眺めながら、ルーシーが得意げに胸を張り、周囲のクルーに向けて言ったでしょ、と言わんばかりにウィンクした。 「ね? 言ったでしょ? この人達、こういう『バカげた冒険』が大好きだから、絶対に喜ぶって!」 食堂は再び、楽しげな笑い声と熱気で包み込まれた。

しかし、その数秒後。ヴィンスはふっと腕を組み、プロの顔つきになって呟いた。

「……おい、さっき聞き逃さなかったぞ。50メートルって言ったな?」 「はい」 「そんな絶壁の、しかも極小のスペースに……本当に着陸できるのか?」

ヴィンスの現実的な問いかけに、リアムは力強くうなずく。 「それなんですが……エドワード博士」 「ん? なんだ??」

リアムが、ふふっと笑みを浮かべながら懐からスケッチブックを取り出し、サラサラと何やら描き出した。

「……!!」

最初は怪訝な顔をしていたエドワードだったが、その図面を見た瞬間、目を見張り、次の瞬間には子供のように目を輝かせた。 「なんだと……!? 君、これを……いや、待てよ、この角度からなら……!」

「リアム! 君には毎回驚かされるが……その方法なら、確かにあの岩山の上でも着陸できそうだな!」 興奮気味にそう返すエドワードに、リアムは満足そうに頷く。 「はい、これしかないっていう渾身のアイデアです。明日は、まずその機体の改修作業から入りましょう!」

未知のアイデアに目を輝かせる天才科学者と若き設計士。周囲の仲間たちは「よくわからないけど、あの2人が言うなら、まぁ間違いねぇか」と、どこか全幅の信頼を置くように笑いながらグラスを傾けた。

竜の如き進化を遂げた未知の知性体――『ドラゴノイド』が待つ、標高50メートルの孤高の岩山へ。 彼らを乗せたアイアンクラウンは、さらなる狂気と偉大なる挑戦へと飛び立とうとしていた。


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