第8章 最強を乗せ彼の地へ
食堂に移動して、乗組員達は思い思いにフォークとナイフを手に取った。 ルーシーが「腹減ったー!いただきまーーす!!」と声を張り上げ、目の前の皿を瞬く間に空にしていく。その驚異的な食べっぷりに、皆は呆気に取られながらも微笑ましく見守っていた。 一方、ガントはビールをジョッキごとがぶ飲みし、「くぅーーーーー……ビールってこんなに美味かったか!?」と、この上ないご満悦の表情を浮かべる。 カサヴェテスとバトラーはウイスキーを片手に葉巻きへ優雅に火をつけ、リアムは食事を口パンパンに頬張りながらも、今日一番生き生きとした顔をしていた。
そんな様子を見ながら、ヴィンスが嬉しそうにリアムへ話しかける。 「なんだ? リアム、やけに楽しそうだな。朝とは別人と感じる程、『男』の顔になってるぞ」
そこにアルベルトも近づいてきて、ヴィンスにウイスキーの入ったグラスを手渡すと、穏やかな口調で言った。 「リアム、改めてはじめまして。アルベルト・ハインリヒだ。アイアンクラウンの設計、君らしいな?」
「はじめまして! リアム・ドレイクです。そうです。恵まれた環境と、皆さんの力でEXPまで辿り着けたことに感謝してます!」 リアムは真っ直ぐにアルベルトの目を見て答えた。
「おい、ヴィンス。彼の目は……」 アルベルトが言いかけた言葉を遮るように、ヴィンスが前のめりに言った。 「だろ?? 俺も20年軍にいて色んな男に会ってきたけどな。こんな目が出来るやつは、滅多にお目にかかれねぇよ」 アルベルトがリアムの肩にポンと手をやりながら、「そうだな」と深く頷く。 リアムは照れくさそうに手を左右に振りながら、「そんなことないですよ。ただのスキニーです!」と言いつつ、空腹には勝てないとばかりにまた肉にかぶりついた。
ヴィンスは笑いながら頭をポリポリと掻き、ふと周囲を見渡す。そして、ハッと何かを思い出したように声を張り上げた。 「おい、エドワード! エドワード博士! 向こう側の話、聞かせてくれよ!!」 完全にエドワードにロックオンしたヴィンスは、目を爛々と輝かせている。 食事を大体済ませてビールを傾けていたエドワードは、「いいぞ」と余裕の笑みを浮かべて手招きした。
ヴィンスとアルベルトは足早に歩み寄り、エドワードの向かいの席をぶんどるようにドカッと座る。 「……で? 何があったんですか、『向こう側』で」
エドワードは、これまでの驚愕の事実を一挙に説明していった。 森の木々より遥かに高い超大型草食恐竜、リトルボーイの群れに突っ込み、それを軽々と捕食する巨大ネコ、数十メートルもある高さの木をしならせて飛びかかる大猿、そして速く高い集団飛行を可能とする小型翼竜のこと――。
「な、なんだそれは!!」 ヴィンスとアルベルトは目を合わせ、面白がるように顔をほころばせた。 エドワードは少し呆れたような、それでいて嬉しそうな笑みを浮かべて言う。 「本当に、キミ達のような人種の頭の中は理解できんよ!」
アルベルトが軽く手を振りながら返す。 「いやいや博士、俺達は好奇心とエネルギーが溢れちまってるから、こんな所にいるんですよ。な? ヴィンス」 「あぁ、そうだな。ある意味、ここにはクレイジーな奴しか集まってねぇよ」 2人はケラケラと豪快に笑った。
そのやり取りを聞いていたルーシーが、トコトコと歩み寄ってきて口を開く。 「ふゎーー、腹いっぱい! ……ねえヴィンス、今の博士の話、一番大事なヤツをまだ言ってないよ!」 ルーシーとエドワードは、意味深に目を合わせてニヤリと笑った。
ヴィンスが、勿体ぶるなと言わんばかりに身を乗り出して聞いた。 「なんだそれは!? ここまで聞いた話が前菜に思えるほどのヤツでもいたのか!?」
するとルーシーが、自慢げに胸を張って言葉を発した。 「うん、すっげーヤツらがいたよ! 『ドラゴノイド』――」
ヴィンス、アルベルト、そしていつの間にか話を聞きたくて周囲を取り囲んでいた兵士や作業員達は、思わず息を呑み、その一言に食い入るように聞き入った。




