↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/63

第7章その9 速くて高いヤツ

―――PM14:40

エドワードが 「リアム!!帰りは無事に帰還する事を最優先しよう。接触リスクが減るように、高度を上げれるか?」

リアム 「わかりました!80mくらいまで上げますね!」

グイーーーーン

レバーを手前に引き、機体はさらに高度を上げる。 改めて見渡すと、そこには息を呑むほど美しい景色が広がっていた。 永遠とも思えるグリーンのカーペット。眼下を追い掛けて来る、小さなEXPの影。 ジャングル内で作業している時には、目をやる事も無かった抜ける様な青空。 この地球の壮大さに、一同は改めて心を奪われていくのだった。

そんな静寂を破るように、ルーシーが声を張り上げる。 「カサヴェテス大佐ー! ヴィンス達乗せてもう一度来るんでしょ!?」

持ち前のKYは、こういう時にとても役に立つ。 皆が触れようか触れまいかと思っている話題に、平気で切り込めるわけだ。

カサヴェテスが、苦笑混じりに応じる。 「そうだな。ドラゴノイドの事は、恐竜に匹敵するくらい興味がある事だからな」

バトラーが、静かに言葉を継ぐ。 「そうだな。しかし彼らは、あくまでヒトだ。いざとなったら迎撃するというのは、人の道から外れる」

彼らは歴戦の軍人で、戦い続けてきたが、人を殺める事を正当化したり、好んでいるわけではないのだ。 相手を倒すわけではなく、生きる為に必要だから戦ってきた。 今回も同様で、強い奴が現れたから倒したいなどとは微塵も思っていないのだ。

ヴィクターが、眼鏡の位置を直しながら提案する。 「そうなりますと、本部を指揮する者が必要となりますね。私が残りましょうか?」

カサヴェテスが首を横に振る。 「いや、俺とバトラーで指揮を取ろう。君の知識やナビゲートは必要だ」

ルーシーが指を折りながら数え始める。 「となると……私とリアム、ヴィンス、ヴィクター、アラン、エドワード博士、それからガントかな? もう1人乗れるけど」

ガントの名前の前に「それから」を付けるのは、彼女の悪意ではない……ただの天然である。

バトラーが腕を組み、誰かを思い浮かべる。 「ハインリッヒも乗せよう。ヤツは君達で言うならヴィンスに匹敵する怪物だ。いざとなったら、確実にチームのプラスになる男だ」

カサヴェテスがポンと手を叩く。 「あぁ、彼だな。色々バタバタしていて話していないが、それらしい男を見掛けたよ」

(あーー、きっとあの人だろうなー) エドワード、ルーシー、リアムガントの4人が、同じ人物を頭に思い浮かべる。

……その時、機体がふわりと揺れた。 リアムが目を見開く。 「お、えっ!? なんだコイツら! 鳥? コウモリ?」

窓の外に目を凝らすと、それは小型の翼竜の群れだった。 EXPの巡航速度である時速130kmにぴったりと並走してついてきている。 しかも彼らは、機内に居る人間に視線を送り、まるで観察しているかのようにこちらを見つめているのだ。

ルーシーが青ざめる。 「いやーー、なにコイツらこっち見てない!? 気持ち悪い!」

それは無理もないことだった。 鳥類は通常の認識であれば、「どこを見ているかわからない」鳩などを想像すればわかるが、こちらが凝視しても、彼らの目ははっきりと意思を持ってこちらを捉えており、その表情が読み取れないものだ。

エドワードが冷静に分析する。 「あぁ、明らかにこちらを見てるな。ただ敵意はなさそうだ。おそらく高度を上げたから遭遇したのだろう。大型翼竜より上を飛行して身を守っているんだな」

しかし、彼らは決して機の前に出ようとはしない。 速く高く飛べる「だけ」の彼らは、危機管理能力も非常に高かった。 EXPの前に出たら最後、危険——すなわち死を意味することを、本能で理解しているのだ。

しかし、ルーシーの悲鳴が響く。 「い?い、いやっ! ちょっと待って!! 増えてるよね!?」

全員が周りを見渡すと、最初は数十羽程度だったそれが、10倍か、あるいはそれ以上か――数百羽もの群れに囲まれていた。

カサヴェテスが険しい表情になる。 「これは、まずいな。少しでも接触したら、連鎖的に他の奴らにもぶつかるぞ。そうなれば彼らも我々も、ただじゃ済まない」

リアムが焦りをにじませる。 「どうしますか!? 加速して引き離しますか!!?」

エドワードが首を振る。 「無駄だ、ヤツらは楽勝でついてきている。加速したら彼らも加速するだけさ」

カサヴェテスが決断を下す。 「リアム!! やむを得ない、トリガーに手をかけろ! 発砲準備だ!!」

リアムが息を呑む。 「で、でも大佐! ヤツらは翼より後ろに居るので、マシンガンは当たりません!」

「構わん!! 威嚇掃射だ!」 カサヴェテスが力強く指示を飛ばす。 「緩やかに高度を上げるんだ。高度を上げた状態で掃射するんだ!」

リアムは、その言葉の意図にハッと気付く。 カサヴェテスは、少しでも銃口の角度が低いと、下のジャングルを傷つけてしまうことを気遣い、軌道をあえて上に向ける指示を出したのだ。

「Yes, sir !!」

ギュイィィーーーーーーーン!!

カチッ。

ドガガガガガガガガガガッ!!

ブワッサーーーーーーー!!

凄まじい轟音とともに、群れが左右にパカリと割れる。まるで2枚の大型の翼が羽ばたくような音をあげ、美しい弧を描いて広がるように空の彼方へと去っていった。

静けさを取り戻した機内で、ヴィクターがいつものようにノートを開き、ペンを走らせる。

リトルウイング

集団で飛行し、人間から見ても目が合うと認識できる。

非常に高速で飛行し、大型翼竜よりも高い空を移動する。

なお、このネーミングには、ルーシーはこれ微塵も興味を示さなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。