第6章その4 輝かす機体 ガントの失敗
一同は作業場に向かう。
……っな。 なんだこれは!
リアムからサイズ感は聞いていたはずなのに、あまりに大きな機体を目の当たりにし、一同は絶句した。
カサヴェテスが思わず声を漏らす。 「こんなにデカい機体が飛べるのか!?」
リアムは誇らしげに胸を張った。 「はい! この翼で揚力が安定します。エンジンが2つあるので飛行後も安定した加速が可能で、何より離陸時の加速が自力で可能です」
それを聞いたエドワードは、感嘆の色を隠せない様子で肩を叩いた。 「アーサー、リアムは本当に凄い奴だよ。世界中の開発者の10年も20年も先を行ってやがる」
ヴィクターも負けじと小難しい計算式を早口でまくし立てて対抗しようとしたが、あまりの構造の複雑さに「ぐぬぬ……」と、途中で頭を抱えてわからなくなってしまう。
そんな学者たちのやり取りを他所に、ヴィンスがフッと笑って機体に歩み寄った。 「んで、リアム? この夢の飛行機で何がしたいんだ?」
リアムは澄んだ瞳を輝かせ、まっすぐに前を見据えた。 「はい。南へ行きたいです。上空から恐竜達が見たいです」
その純粋な言葉に、バトラーは深く息を呑んだ。 「なんと……あのまま敵対していたら、リアム1人に俺達はやられていた。リアム頼む、我々もその調査に同行させてくれ」
リアムは満面の笑みを浮かべる。 「もちろんです!! 大佐や少佐やガント、そしてあなた方も乗せたいとエドワード博士と話していました」
バトラーは最初こそ「あぁ、これは重要な生体調査で今後の人類の為に……」と取り繕おうとしたが、直後に我慢できなくなったように両手を広げた。
「あぁーー! もう良いや。すまんリアム、コイツに乗りたい! そして向こう側を俺も見たい!」
バトラーはまるで少年のように目を輝かせ、その姿を見たカサヴェテスは「バトラー、今あの頃の顔に戻ってたぞ」と楽しそうに茶化すのだった。
エドワードが自慢げに胸を張り、機体を軽く叩いて言った。 「この機体はな、揚力が高くてガソリン消費が少ない設計になってる。タンクも大きいからある程度の長距離飛行も可能だ」
それを聞いたバトラーが、面白がるようにニヤリと笑った。 「長距離? ふん、せいぜい500キロくらいは飛べるのか?」 と、軽く吹っかけ気味に聞く。
しかし、リアムは至って真面目な顔で答えた。 「いえ、無風状態で計算して、およそ3000キロです。往復の事を考えて、安全圏の余力も十分に踏まえても、1000キロ程は余裕で南下できますよ」
……っ!
一同、驚いて絶句する。
ようやく国力や、最新の建設技術を総動員して超えてきた、この数10kmを軽く凌駕する探索距離。
エドワードが続けて口を開いた。 「ただし、私の知識では上空の覇者の恐竜がいるはずだ。そいつらと遭遇してしまったら、攻撃を仕掛けなければならないかも知れない」
それを聞いたガントが、頭をポリポリとかきながら呟く。 「……あ。それ、俺見たよ」 どこか申し訳なさそうに言うガントに、一同は驚愕の視線を向けた。
「本当か!? それで撃墜したのか!?」
「あ、いや……羽はデカいがスキニーなヤツだった。俺が旋回していたら、大慌てで群れごと逃げて行ったよ」
呆気にとられていたカサヴェテスが、慌てて声を荒げる。 「おまっ……バッ……そんな重要な報告、上がってないぞ! 早く言え!!」
「いや、だって特に被害なかったし……!」 慌てるガントの胸元に、ヴィンスが「この野郎!」とばかりに軽くパンチを叩き込んだ。




