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第5章 その4 猛る狼 立ち上る炎

アイアンクラウンNo.2による見事なロケット弾の直撃を受け、強敵デビルは地面へと沈んだ。リアムの胸を高鳴らせる興奮と、冷めやらぬ恐怖。その空の戦いの裏で、地上でもまた、生存をかけた決死の防衛作戦が幕を開けていた――。

リアムは激しく鳴り響くプロペラの爆音の中、自覚できるほど激しく高鳴る鼓動を必死に落ち着かせる。

「デビル吹っ飛んだな……!」

思考を切り替え、彼は操縦桿を倒して再び機体を旋回させた。デビルが倒れていた地点へと戻り、上空から地上を慎重に見下ろす。そこには、圧倒的な巨躯をさらしたまま、地面に横たわった状態でピクリとも動かないデビルの姿があった。

「よーーーーーーーーしっ!!! 通用したぞ!」

確かな手応えに、リアムは歓喜の声を上げる。その後もしばらく周囲を上空から旋回し、完全に仕留めたことを確認すると、さらなる脅威を求めて別の恐竜の捜索へと機体を飛ばしていった。

一方その頃、地上では――。

プシューーーガシャン……ガシャン、キーーーーーーッ……!

重苦しい機械音を立てながら、作業員たち、レオン率いる特殊部隊チーム、そしてルーシーが目的地の封鎖現場へと到着した。 そこは岩壁に挟まれた、かつて伐採が行われ鉄路が敷かれた通路だった。道幅はおよそ6m。

「時間がない、急ぐぞ! まず杭を打つぞ!そこらじゅうの生木を積み上げて、なるべく高い高さで防壁を作るんだ!」

レオンの指示が飛ぶ。特殊部隊の彼らは北側と南側に重マシンガンを2台ずつ配置することになった。防壁の向こう側、つまり敵側にとり残される形になる者も出るが、「俺たち特殊部隊の機動力なら容易に戻れるから気にするな」と、レオンは迷いなく作業を急かした。 なお、ルーシーは「作業の様子を特等席で見たい!」と主張し、北側へと残ることに決まった。

普段の冷静な彼であれば南側を志願するところだが、今回は現場の指揮官として北側に踏みとどまるレオン。 作業員と隊員たちが一体となり、重機や素手をフル活用して生木を次々と積み上げていく。まだ伐採されて間もない生木は、枝葉がふさふさと着いたまま放置されていたため、むしろかさばって驚くほどスピーディーに積み上がっていった。

あっという間に、高さ約4mもの分厚い生木の防壁が完成する。

その時――!

南側の隊員が、緊迫した声を張り上げた。 「Wolfーーー!!! 来るぞ!」 (※レオン・フォックスは、その鋭い身のこなしや気配から、仲間内からキツネというより狼のようだと評され、「ウルフ」と呼ばれている)

その叫び声を聞くやいなや、レオンは身軽に防壁のトップへと駆け上がった。

ヴガァーーーーーーーーォ!!……

腹の底を直接突き抜けるような、圧倒的な地響きを伴う咆哮が響き渡る。

「It's a Devilデビルだ

またしてもデビルが、こちらへ向かって猛然と突き進んできた。北側のマシンガンは防壁の反対側に位置しているため、ここでは撃つことができない。

「弾道が低い!顔を狙え!!

ルーシー!! 信号弾(煙が大量に出るだけの合図用の玉)とガソリンを持ってこい!!」 「えっ、あ……どこどこ!?」 「お前の足元だ!」

ルーシーが軽やかによじ登り足元から差し出した装備を、レオンは迷うことなく掴み取る。

南側の隊員たちが放つマシンガンの銃弾がデビルに浴びせかけられるが、デビルはそれを避けるどころかものともせず、凄まじい頑強な巨躯でそのまま突進してくる。

「いいか!! 俺が信号弾を奴の顔面に当てる。煙が巻いたら一斉に手を離して北側に退避だ!!」

轟音をかき消すようなレオンの大声に、隊員たちが力強く応じる。

「ラジャー!!」

デビルが目の前まで迫ったその瞬間、ベストなタイミングを見計らってレオンは思い切り腕を振った。

ボファーーーーーッ!!


投げ込まれた信号弾がデビルの顔面周辺で炸裂し、あたり一面が大量の濃い煙に包まれる。デビルはその場で足を止め、巨大な頭を何度も激しく振り払った。やがて煙が晴れていく。南側の隊員たちはすでに指示通り北側へと素早く退避を済ませていた。

トクトクトクトクトクトク

ピッ ピッ

煙が完全に消え、視界が開けたデビルは、防壁の上にぽつんと立っているレオンの姿を捉えた。

ウガァーーーーーーーォ……!

デビルはフンと鼻を鳴らすと、「お前だけか」と冷笑するかのように、なおも余裕の表情を浮かべながらさらにゆっくりと、しかし確実に距離を詰めて近づいてくる。


レオンは微動だにせず、デビルの巨体が罠の範囲に入るのを冷徹に待ち構える。

レオンはポケットから取り出したマッチを5、6本まとめて箱の側面で勢いよく擦り合わせた。

ジャッ……!


「――FIRE!!」

レオンが仕掛けた木材のガソリントラップから凄まじい火柱が上がる。

ボォーーーーーーーーーッ!!

猛烈な炎がデビルを直撃する。周辺は岩壁と積み上げられた木材に囲まれており、火の行き場さえも失った炉のようになって熱量が猛威を振るう。 熱さにたまらずデビルは激しく咆哮し、暑さを嫌うデビルは、くるっと振り返るとすごすごと去って行った。

戦闘が終わり、呆気に取られていたルーシーがパチパチとまばたきをしながら尋ねる。

「なに……? もう居なくなったの?」 「あぁ、あいつらは火が嫌いみたいだな。うまく撃退できた」 「でもさ、これだけ盛大に燃やしちゃったら、この防壁って燃え尽きて、火の行き場も無くなっちゃう周辺はどうなるの?」

ルーシーの心配そうな問いに、レオンは冷静に首を横に振る。

「それは大丈夫だ。ガソリンの量は完璧に調整してあるから、ちょうどいいタイミングで鎮火するさ。それに、次からの生木はなるべく湿地の方から切り出してくれば、余計なところまで燃え移る心配もないだろ」

レオンは、限られた水、食料、時間、そして燃料を極限まで効率良く使いこなすことに非常に優れた、特殊部隊の中でも超一流のサバイバーだ。あらゆる最悪の事態を見越し、あらかじめ完璧な準備を整えていたのだ。

そのやり取りを聞いていた作業員たちが、次々と声を上げる。

「レオン!! いや、Wolf!!」 「痺れたよ!! アンタ達がこんな風に守ってくれるなら、俺たちは安心して作業が出来るよ!」

その言葉には、命を預けた者だけが抱く確かな羨望と信頼の色が滲んでいた。他の作業員たちも「本当にな」「心強すぎるぜ」と口々にうんうんと力強く頷いている。

レオンは仲間や作業員たちに向け、ニヤリと笑って親指を立てた。

「よし――このままやっちまいましょう」 ーーーと。 頼もしく笑った。


バリケード計画

幅6mの通路に対し、1.5m間隔で頑丈な杭(主柱)を打ち込み、高さ7m超えの生木を柱として建てて鉄路や岩壁とガッチリ結び付けて固定する。

さらにその2.8m後方にも全く同じ構造のフレームを作り、前後二重の強固な骨組みを構築する。

その前後の骨組みの間に、枝葉がついたままの生木を文字通り「どんどんぶち込んで」隙間なく詰め上げ、圧倒的なボリュームと自重を持つ超巨大防壁を完成させる。


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