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第5章 その3 それぞれの役割 圧倒的な巨躯

長さの単位をフィートで表記して来ましたが、わかりづらいので(作者も)メートルやキログラムに変えて行きます。

アイアンクラウンNo.2に続き、ガントが操縦するNo.3が地を蹴り、轟音を轟かせながら青空へと飛び立っていく。その後を追うように、力強い軌跡が空へと描かれた。

地上で見守っていた一同はしばらく言葉を失っていたが、ヴィンスがハッと我に返り、大声で周囲を現実に引き戻す。

「空を見上げてる場合じゃねーぞ!」

その言葉にハッとしたルーシーは、チョコレートの包み紙をポケットに押し込みながら、不満げかつ羨ましそうに空を見上げて頬を膨らせた。

「さっき見たから感動も無いけど、やっぱりすげーなって言うか、ずるいよねあんなの!」

ヴィンスはすかさず彼女の頭を軽く叩き、やれやれといった表情で突っ込む。

「それを言うな、ルーシー。あの機体がどれだけの調整の末に飛んでると思ってやがる」

「いってぇ! だって事実だもん!」

軽口を叩き合いつつも、ヴィンスの表情は一気に険しくなる。彼はすぐに周囲の隊員や警備の者たちへ声を張り上げた。

「レオン達は封鎖する現場に向かってくれ!」

レオンはピシッと敬礼し、力強く声を張り上げた。

「Yes, sir!」

ルーシーは「私もそこに行ってくるよ、ヴィンス!」と声を飛ばすと、身軽に跳ね起き、自分の持ち場である封鎖する現場へ向かうため機関車のほうへと駆け出した。

その一方で、基地の一画ではすでに次なる戦力を見据えた動きが始まっていた。

「よし、ぼんやりしている暇はないぞ。作業員たち、こちらへ手を貸せ!」

エドワードが数名の熟練作業員を従え、これから新たに作り始めるアイアンクラウンNo.4の制作現場へと駆け戻り、指導を始める。

ヴィンスもまた、宿舎周辺の厳戒態勢に加わるため、銃を片手に険しい顔つきで巡回へと戻った。

一方、カサヴェテスは陣地の中で最も高い場所にある監視塔へと足を運んでいた。

木造の階段を駆け上がり、手すりに辿り着くと、彼は首から下げていた双眼鏡をケースから取り出す。1910年の当時としては最先端の光学機器であるその双眼鏡を両手でしっかりと構え、レンズの焦点を合わせながら、雲ひとつない南方の地平線の彼方へと視線を凝らした。

同じ頃――基地から約15kmほど北上した上空。

操縦桿を握り、プロペラとエンジンの振動を全身で感じながら冷たい風の中を飛行しているリアムだ。

「……そろそろか」

いや、正直に言って、ここがどこなのか、正確な位置など全くわかっていない。見下ろす大地は、自分たちがこれまで苦労して切り拓き、鉄路を延ばしてきた開拓地を逆走するように広がっている。

それでも、3ヶ月ほど前に鉄路の現場でデビルを見かけ、一目散にトロッコで逃げ出したあの恐怖の記憶が、「このあたりに奴がいるかもしれない」という不気味な確信をリアムに抱かせていた。

ふと眼下の開けた平地へと視線を向けた瞬間、リアムの眼に信じられないほど巨大な怪物の姿が飛び込んでくる。

紛うことない、あの忌々しいデビルだ。

3ヶ月前のあの日に生きた姿をこの目で見て以来だが、眼下の巨獣を捉えた瞬間、測量士としての的確な勘が働き、「13mくらいあるぞ」と瞬時に脳裏でサイズを弾き出した。

生きて脈打ち、脅威を放つその圧倒的な存在感に、一瞬だけ息が詰まる。だが、リアムはすぐに奥歯を噛みしめて恐怖をねじ伏せ、操縦桿を倒して機体を緩やかに旋回させた。

「まずは挨拶がわりだ。お手並み拝見といこう――!」

デビルの一瞬の隙を突き、正面から回り込んで試しにマシンガンのトリガーに指を掛ける。

ドガガガガガガガガ……ッ!!

凄まじい銃声とともに、曳光弾の軌跡がデビルの頑強な巨体へと吸い込まれていく。

ブォーーーーーーン――!

エンジン音を響かせながらそのまま上空を通り過ぎ、もう一度機体を大きく旋回させる。

こちらを見て、デビルが猛々しく咆哮している。

上空から見下ろしているにもかかわらず、その威圧感は凄まじく、見たところデビルの巨体にはキズを負っている様にすら見えなかった。

その瞬間――。

ーーーーーーーっつ。

激しい頭痛とともに、リアムのこめかみに鋭い痛みが走る。

頭の中に鮮明に浮かび上がるのは、見た事のあるはずもない、あまりに生々しい光景――デビルの口内に広がる、絶望的なまでに鋭利な牙の数々が脳裏を駆け巡る。

得体の知れない恐怖と悪寒が一気に背中を駆け抜けた。

その時に頭を抜ける「誰か」の声。

「大丈夫だ。ロケット弾を撃ってみろ。お前は勝てる」

不思議なことに、その声を聞いた瞬間、頭を走っていた痛み、恐怖、悪寒がスッキリと無くなった。

リアムは1度頭を大きく横に振り、雑念を払う。

そして、気を取り直してもう一度デビルの正面に回り込んだ。

迷いは消えた。

「ここだ!!!

FIREーーーーー!!!!

行けーー!!!ッ!!」

リアムが投下スイッチを押し込んだ瞬間、機体の下部からドシュウウッ――! とすさまじい白煙と激しい炎が吹き荒れ、重厚な金属音とともに試作型小型対地ロケット弾が荒々しく射出される。

安定翼が空気を切り裂くヒュオオオオ……!という凄まじい飛行音を響かせながら、無誘導のロケット弾は狙いたがわずデビルの巨体へと一直線に突き進んでいった。

そして――。

ドゴッ……! ズシャアアアッ!!

デビルの硬い装甲に激突した瞬間、近代の兵器とは違う、火薬と金属が暴れ狂うような重厚な爆発が轟き、凄まじい衝撃と破片が辺りの空気を揺らした。

ズゥーーーーーーーーーーーン……!

あの巨体が地響きを立てて倒れた。

リアムは、手応えと安堵と恐怖が入り交じり鼓動が激しくなるのを感じた。


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