第1章:大航海時代 消えゆくロマン
1543年〜文明という檻に飽き飽きした15名の若者たちを乗せた船「アイアン・クラウン号」は、最新鋭の火縄銃を手に、未知の海域へと突き進んでいた。彼らが目指したのは、伝説の海図に「世界の終わり」と記された赤道の彼方。南の果ての先にある、未知なる富と野心の地である。
「見たかよあの海図、臆病者が書いた落書きに過ぎねぇ、俺たちがその線を塗りつぶして新世界の王になってやるんだ」
21歳のアランがそう笑いながら砂浜へ降り立ち、鬱蒼と茂るジャングルに足を踏み入れたときのことです。彼は見上げるような巨大なシダ植物を指差し、仲間を振り返ってケラケラと笑いました。
「なんだあれ、笑えるな。葉っぱデカすぎだろ! ここの植物は、太陽を独り占めする気かよ?」
しかし、アランの軽口を最後に、ジャングルからは不自然なほどに鳥のさえずりも獣の気配も消え去りました。やがて、大地を割るような地響きが彼らを襲います。
木々をなぎ倒して現れたのは、現代の生物とは一線を画す、圧倒的な筋肉の塊と鋸歯状の牙を備えたティラノサウルスでした。
「なんだ!!?あの馬鹿げたサイズのトカゲは!!? トカゲなんてもんじゃねぇ!! ドラゴンだ!!」
アランの叫びも虚しく、火縄銃の鉛玉はその分厚い皮膚の前では蚊に刺されたほどの効力もありません。「逃げろ、船まで戻るんだ!」という仲間の絶望的な叫びも空しく、彼らは次々と蹂躙されていきました。
仲間たちが無残に散る中、武器を捨てたアランは最後の一歩も退かず、震える手で懐の小瓶を取り出しました。琥珀色のウイスキーを喉に流し込み、夕日を浴びて金色に輝く怪物の深淵のような瞳を見上げて、小さく笑います。
「間違いねぇや……こりゃWorld's End Lineだわ……」
最期の一口を飲み干したその瞬間、ガリという肉を断つ鈍い音と共にジャングルに死の静寂が戻りました。そして海辺では、惨劇の結末を告げるはずだった無人の小舟が、突如として海面を割った巨大な海竜の牙によって、紙細工のように粉砕されていました。彼らの野心も未来も、陸と海の両方から歴史の記録とともに永遠に消し去られたのです。




