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第4章その6 夜更け夜明け戦慄

日の傾きと共に緊張が走った夕暮れを越え、基地の一日は静かな夜へと移り変わっていった。

給仕班のルーシーたちがテキパキと準備した温かいレーションと、前線基地ならではの現場の食料がテーブルに並ぶ。厳しい作戦会議を終えたばかりの男たちは、それぞれにフォークとナイフを手に取り、明日への英気を養うべく夕飯を囲んだ。

夜更けが訪れると、特殊部隊の交代護衛を除き、一同はそれぞれの宿舎へと戻り就寝の途につく。

なお、選りすぐりの精鋭である護衛部隊の面々は、極限の環境下で確実に睡眠をとる術も心得ていた。出番ではない時はしっかりと体を休め、わずかな時間でも極上の休息に変える。そんな彼らのタフさが、この最前線を支えているのだった。

そして、季節の変わり目特有の気まぐれか、夜の3時頃には激しい大雨が基地を打ち付けた。

ざあざあ容赦なく降り注いだ雨のおかげで、夜明け前の空気はしんしんと冷え込み、肌寒さを覚えるほどにひんやりと静まり返っている。

しかし、ヴィンスやカサヴェテスらの胸中には、冷気とは裏腹の重苦しい懸念が広がっていた。

――この冷え込みと雨上がりは、間違いなく恐竜たちの活動を活発化させる。

やがて訪れた翌朝――。

日の出はまだ間もない午前5時。約束通り、集合場所には眠気を残しつつも引き締まった顔つきの隊員たちが集結していた。

本日のスケジュールはタイトに組まれている。

* **午前4時半**:作業員数名とリアム、ガントがカタパルトの蒸気機関に点火するため先行。

* **午前5時**:全体集合。

* **午前6時半**:アイアンクラウン発進フライト

スケジュールを確認したルーシーは、「フライトを見てから封鎖に行けるわね!」と、南への封鎖作業の前にアイアンクラウンの離陸シーンが生で見られると知り、どこか嬉しそうに飛び跳ねていた。

宿舎の周辺では、カタパルトや封鎖現場へと向かう機関車に火が入れられ、重厚な蒸気の音が響き渡る。作業員たちが手際よく工具を積み込み、慌ただしく動き回っていた。

すっかり夜が明けた朝の光の中、カサヴェテスとヴィンスの2人は、軍用トラックのエンジンを低く唸らせながら、昨日仕込んだ特設バーベキュー台の様子を確認すべく現場へと向かった。

昨日、リトルボーイの亡き骸を慎重に乗せ、完璧な弱火でじっくりと火を通していたはずの特設バーベキュー台。その傍らの地面には、デカい恐竜の亡き骸がそのまま転がっているはずだった。

車を降りてその場に近づいた二人は、思わず我が目を疑い、背筋が凍るような光景を目撃する。

「……なんだ、これ……」

地面に転がっていたはずの大型の恐竜の亡き骸は、その分厚い腹部が無残にも大きく引き裂かれ、中の肉をごっそりと喰い荒らされていた。

それだけではない。周囲の地面には、昨日討伐したはずのリトルボーイとは明らかに違う、新たな「リトルボーイの亡き骸」が3体も転がっていたのだ。

「昨日の今日で……いや、昨夜の間に、一体何が起きた……?」

前日現れた、あの圧倒的な巨体を誇るトリケラトプス――基地の面々が「ビゲスト・ホーン」と名付けたあの巨大な草食恐竜ではない。もっと凶悪で、もっと狡猾な何者かだ。

小型の恐竜を「リトルボーイ」とするならば、昨日のトリケラトプスは「ビゲスト・ホーン」。

そして、大型で最も恐ろしい肉食恐竜――。

彼らはその圧倒的な脅威を込めて、こう呼ぶことにした。

「……『デビル』か」

背筋に冷たいものが走る惨状を確認した二人は、すぐに宿舎へとって返し、リアム、ガント、エドワード、そしてレオンの主要メンバーを急ぎ招集した。

重苦しい空気の漂う部屋の中で、カサヴェテスとヴィンスは今見てきたばかりの現場の状況を話し始める。

「――そういうわけだ。昨夜の間に、地面に転がっていたデカい恐竜の腹が何者かに食い荒らされていた。しかも、新たなリトルボーイの死体が3体も転がっていた」

その衝撃的な報告に、集まった男たちは絶句し、険しい表情を浮かべた。

だが、そんな緊迫した会議の場において、なぜか給仕班であるはずのルーシーが、いつの間にかちゃっかりと一員のように混ざり込み、腕を組んで深刻そうに頷きながらその話に聞き入っていた。

「ちょっと、大佐……。それってつまり、私たちの知らないところで、もっとヤバい大型の肉食恐竜がうろついているってことよね?」

「……ああ、そうだ。『デビル』の仕業と見るべきだろう」

カサヴェテスの言葉を受け、室内の男たちが一層気を引き締める中、ルーシーは一人で大きくうなずきながら、ちゃっかりと次の作戦に思いを馳せ始めるのだった。

雨上がりの朝、冷たい風が戦場の予兆を運ぶ中、人類と未知の巨獣たちとの本格的な激突の時は、刻一刻と迫りつつあった。


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