第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――決め手なし
瞬間、ディストレイの頭部左右に格納されていた小型砲門が展開された。そこから放たれるのは『浄化の炎』を小さな球体に圧縮した火球の連射だ。
ドドドドドドッ!
真紅の火球が雨あられと甲冑サムライに向かって降り注ぐ。それはまさにバルカン砲の如き速射で、一発一発が負の念を焼き尽くす浄化の弾丸だ。
「何だと⁉」
予想外の攻撃方法にディザスターの声が驚愕に震えた。彼はとっさに左手を掲げ周囲の負の念を集めて黒いシールドを形成する。火球がシールドに着弾するたびに、ジュッジュッと音を立てて負の念が蒸発していく。
「ぐっ……こんな芸当もできるのか……!」
「まだまだぁ!」
カナリアが照準を微調整し、シールドの弱い部分に火球を集中させる。シールドにひびが入りそこから火球が貫通して甲冑の肩や腕に命中した。負の念が噴き出し甲冑が削り取られていく。
「どうだ!」
私が勝利を確信しかけたその時ディザスターの低い笑い声が響いた。
「ふふふ……君は忘れていないか? この甲冑サムライには『恐怖』を操る俺が憑依しているということを」
甲冑サムライが崩れかけたシールドを破棄し左手を天にかざした。すると周囲の負の念が竜巻のように渦を巻き始めそれがディストレイを覆うドーム状の防御壁を形成していく。
「くそっ! やられた!」
火球の弾幕が負の念のドームに阻まれ届かない。
『翔太、あれを破るには大型火力が必要だ』
「わかってる。カナリア! バルカンストップだ」
「OK!」
カナリアが操縦席から離れ私の肩に乗る。
左腕のアトランリアの雷の刃を収束させ私は砲撃モードへの移行を命じた。
逆五角形の盾が変形し、中心に埋め込まれた黄色い宝玉が露出する。そこから膨大な雷のエネルギーが砲身へとチャージされていく。
「おそらく、あのドームの防御力では『裁きの雷弾』はあまり効果がないだろう。ならば……それ以上の威力を持つ『裁きの雷光』でぶった切ってやる!」
アトランリアの変形が完了し砲身全体が眩い黄色の光に包まれる。チャージされたエネルギーは、もはや弾丸の形ではなく極限まで圧縮された光の刃となって砲身に収束していた。
「喰らえ! 『裁きの雷光』!」
私は操縦桿を思い切り押し出した。
ディストレイがアトランリアをまるで巨大な剣を振り回すかのように斜めに振り抜く。砲身から放たれた光の刃が、周囲の空間そのものを切り裂きながら負の念のドームに向かって一直線に迸った。
ズァアアアッ!




