第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――一進一退の攻防
「グォォ……!」
甲冑サムライが苦悶の声を上げ、大きく後退する。その胸元には三本の深い斬撃痕が刻まれ内部から黒い霧が噴き出していた。
甲冑サムライが後退し、ディザスターの感嘆の声が響く。
「おお、これは中々――」
「攻撃だけじゃないよ。周囲を見てみな」
私の指摘に、甲冑サムライの赤い瞳が周囲を見渡した。
「……こ、これは⁉」
先ほどまであたり一面を覆っていたどす黒い負の念が私の回転斬撃によって大きく浄化されているのだ。オリルフィアに纏わせていた『浄化の炎』が遠心力で振り撒かれ、まるで掃除機のように周囲の負の念を焼き尽くしていた。
薄暗かった空間が、少しずつ明るさを取り戻していく。枯れ果てていた庭園の木々の輪郭がはっきりと見え始め池の水も濁りが薄れていた。
「やってくれる……!」
ディザスターの声には、驚きと同時に歓喜の色が滲んでいた。
「素晴らしい! ただ攻撃するだけでなく、周囲の負の念までも浄化するとは! 君は本当に歴代の契約者の中でも群を抜いて優秀だ!」
「褒められるのはありがたいがこれはまだ序の口だ」
『翔太! 来るぞ!』
「わかってる!」
甲冑サムライが大きく息を吐き出すとその胸元から再びドス黒い負の念が噴き出し先ほど刻んだ傷を埋め始めた。
「負の念を支配する俺にとってこれは致命的ではないが……だが認めよう。君は強い」
ディザスターの声が甲冑サムライの奥から響く。
その声にはもはや余裕だけではない。
純粋な戦いの喜びと、そしてかすかな警戒が混じり始めていた。
「ならばこちらも本気を出さねば失礼というものだ」
甲冑サムライが両手で太刀を構え直す。その刀身に、周囲に漂う負の念が吸い寄せられるように集まっていく。錆びついていた刃が黒い光を放ち始めた。
『翔太、奴の刀に注意しろ。負の念を極限まで圧縮している』
ディストレイの警告に、私は操縦桿を握り直した。
「あれはまずいな。カナリア、手伝ってくれ」
「了解だよ、翔太!」
カナリアが小さな手を掲げると、私の隣の空間が揺らめき彼女専用の小さな操縦席が空中に出現した。ホログラムで構成された半透明の球体状の座席に、彼女はひらりとその座席に飛び乗り、照準スコープを装着した。金色の瞳が戦闘モードに入った猫のように細められる。
「さぁて、久しぶりにやりますか!」
カナリアが舌なめずりをしながら、照準スコープをのぞき込んだ。彼女の指先が空中に浮かぶトリガーに触れる。
「いけぇ! バルカン!」




