第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――ディストレイVS甲冑サムライ
『我らは神話の時代から奴らと何度も戦ってきた。その度に我はかなりのダメージを受けたせいで、記憶の大半が失われているのだ』
「なるほど、そういうことか……」
私は納得しつつも、内心では焦りを感じていた。
ディストレイほどの存在ですらこれまでの戦いで多くの記憶を失うほどの激戦を繰り返してきたということだ。
『ちなみに、奴らとは過去に六度の大戦をしたはずだが……』
「六度も⁉ それで今、七度目ってことか」
私は気を引き締め直し正面のスクリーンを見据えた。
甲冑サムライがゆっくりと腰を落とし、抜刀の構えを取っている。その動きは見かけによらず滑らかでまるで熟練の剣士のようだった。
「まあいい。記憶がなくても戦うだけだ」
『そうだな。我も奴のことは覚えていないが戦い方は覚えている』
「頼もしい限りだよ」
甲冑サムライが腰を落としゆっくりと長大な太刀を抜き放った。錆びつき刃こぼれしたその刀身からも、どす黒い負の念が滴り落ちている。
「来るよ、翔太!」
カナリアの警告がコクピットに響く。
「ああ!」
私は操縦桿を握りしめ、右腕の甲からオリルフィアを展開させた。真紅の刀身が姿を現しそれに呼応するように『浄化の炎』が燃え上がる。同時に左腕のアトランリアの先端からは、パチパチと音を立てて雷の刃が形成された。黄色い電光が大気を震わせ周囲の闇を鋭く照らし出す。
「二刀流か……やはり君は面白い!」
甲冑サムライの奥から、ディザスターの歓喜の声が響いた。
甲冑サムライが地を蹴った。
その巨体からは想像もつかない速さで、ディストレイとの間合いを一瞬で詰めてくる。
錆びた太刀が空気を切り裂き、真横から私の首を狙って薙ぎ払われた。
「速い……!」
私はとっさに操縦桿を右に倒し、オリルフィアで太刀を受け止める。
ギャンッ! 金属同士が激しくぶつかり合い火花が散った。衝撃がコクピット全体を揺らす。
「まだだ!」
甲冑サムライが即座に二撃目を繰り出す。今度は上段からの唐竹割り。私は左腕のアトランリアに形成した雷の刃でその一撃を斜めに受け流した。バチバチッ! 雷の刃と負の念が接触し、激しい爆発が起こる。
「ぐっ……! これを止められるか!」
二連撃を受け止めたことで、甲冑サムライの体勢がわずかに崩れた。大きく開いた胴ががら空きになる。
「今だ!」
私はディストレイの巨体をその場で回転させた。その遠心力を乗せてオリルフィアとアトランリアの刃を次々と叩き込んでいく。
一撃、二撃、三撃! 真紅の炎と黄色い雷が交錯し甲冑サムライの胴に深い傷を刻んでいく。負の念が噴き出し甲冑が砕け散る音が響いた。




