第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――ディストレイ召喚
「ほう。やる気になったようだね」
ディザスターの濁った瞳が、私の変化を見逃さずに輝いた。
「ああ。これ以上、彼女だけに負担をかけさせるわけにはいかないのでね」
私は左腕のブレスレットに込められた力を解放した。
パリンッ――!
ブレスレットが内側から砕け散る。
三色の宝石が私の周りに散らばり、空中で静止した。
赤、青、黄の光が互いに絡み合いながら、巨大な魔方陣を形成していく。
地面に幾何学模様が焼き付けられあたり一帯がまばゆい光に包まれた。
「召喚!」
私の叫びとともに魔方陣の中心から真紅の炎の柱が天高く噴き上がった。それは周囲の負の念を一瞬で焼き尽くし、この異様な空間に一筋の光をもたらす。
そのタイミングで、上空から光が降り注ぐ。
事前にパラサイトグリードが関わっている可能性ありという旨を、『心霊対策課』に報告をしており「何かあれば『サテライトビーム』を照射してくれ」と頼んでいたが、絶好のタイミングでやってくれたようだ。
これで心置きなく戦うことができる。
炎はやがて結界となり、炎によって引き寄せられた雷雲が、敵であるディザスターへ向けて落ちる。
しかし、
「ふふふ」
天の雷は濃密な負の霧によって防がれてしまう。
「やはり、上位の存在だけあって、これくらいではダメージすら与えられないか」
ある程度の雷が落ち切ったところで、雷雲も結界となり消えていく。
そして、炎の柱はすぐに凍りつき、透き通った氷の柱へと変わる。そしてその氷が内側から爆ぜた。
「来い! ディストレイ!」
飛び散る氷の結晶の中から真紅の装甲に黄金の縁取りを施された巨人が姿を現す。
赤い装甲、黄色い両腕青い両足。三色の水晶が胸部で脈打つように輝いている。
神の剣と呼ばれるディメンダムの一体、ディストレイがこの地を荒らす無法共を倒すため顕現した。
「おお……!」
ディザスターが感嘆の声を上げる。
その目は、久方ぶりに再会した宿敵をじっくりと観察するように細められていた。
「何度見ても美しい。その姿を見るたびに、我が内なる恐怖が沸き立つ。そしてその恐怖こそが俺の力となる」
ディザスターの体から溢れる負の念がさらに濃密になっていく。彼は私のディストレイを見て恐怖を感じ、その恐怖を己の力に変えているのだ。『恐怖』を司るパラサイトにとって、恐れとは最高の燃料なのだろう。
「ではこちらも、相応しい機体を呼ぼう。さぁ、出てくるがいい」
ディザスターが優雅に指を鳴らした。パチン、という軽やかな音が異様な静寂の中でやけに大きく響く。




