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プロローグ ディストレイ顕現

 人工衛星から照射される『サテライトビーム』は、主に二つの役割がある。

 一つは照射された範囲約三キロメートルの内部で起こった出来事は、外部では認知されないことである。このビームには、内と外を隔絶する力がある。この中で何が起きようとも、外側からは決して戦いの様子を知られることはない。

 もう一つは内部で破壊された建造物は、ビームが消えると同時に復元されること。これについては詳しく解明されていないが、照射された時点でビーム内に含まれている微量な粒子が、空間全ての地形を記憶しているのではないか、というのが研究者たちの見解である。

 とは言っても、このビームの元はディメンダムの力である。

 つまり()()()()を解析するなど不可能なので、そう受け止めるしかないのである。

 これで準備は整った。

 私は救出した三人に、遠くへ逃げるよう指示をした後、左腕のブレスレット――赤・青・黄の三色の光を強く握りしめた。

 私が念じると、三色が同時に激しく明滅し始め、やがてブレスレットが砕け散り、埋め込まれていた三色の球は消える。その衝撃で、足元の瓦礫が吹き飛び、私を中心として地面に幾何学模様が焼き付いていく。

 それは巨大な魔方陣の出現だ。

 魔方陣の中心から、真っ赤な炎の柱が天高く噴き上がった。夜空を焦がすほどの熱量を持つ炎は、瞬く間に広がり、周囲一帯を覆う赤いドーム状の結界となった。

 サテライトビームは、内部からの衝撃に脆いため、普通に戦いをすればすぐに破壊されて消えてしまう。それを防ぐために、神聖な力のある結界を張ることで、あらゆる攻撃からビームを守る結界が必要となるのだ。

 これで恐ろしいパラサイトグリードとディメンダムの姿を見られなくてすむ。さらにパラサイトグリードを結界内に閉じ込めることで被害を最小限に食い止める役割もある。

 しかし、受肉したパラサイトグリードの咆哮が結界を揺るがす。強度が足りない。

 次の瞬間、結界の上部に黒い雷雲が渦巻いた。稲妻が一斉に降り注ぎ、その黄色い光が赤いドーム状の結界に溶け込んでいく。すると、結界はより厚みを増し、金赤色に輝く堅牢な檻へと変貌した。

 そして、天高く昇っていた巨大な炎の柱が、一瞬にして凍りついた。

 パキィィィン!!

 清冽な音と共に、灼熱の柱は透き通った氷の柱へと変わる。周囲の空気すら凍結させる絶対零度の顕現だ。

 氷の柱の中に、何かが見える。

 人の形をした巨人。

 氷の奥深くで、一対の瞳が鋭く光った。

 その瞬間、氷の柱は内側から爆発した。飛び散る氷の結晶の中から、古代語で神の剣と呼ばれるディメンダムの一体がその姿を現した。

「召喚! 『ディストレイ』」

 真っ赤な装甲に金の縁取りが施された巨人『ディストレイ』。

 黄色に染められた両腕は力強く、左腕にはいかなる攻撃をも防ぐ鮮やかな装飾が施された巨大な盾が装備されている。青い両足は冷気を纏いながら大地を踏みしめ、その中心には赤・青・黄の三つの色が重なった水晶が脈打つように輝いていた。

 私は手を叩いた。

 パンッ!!

「ゲートオープン」

 乾いた音が響いた瞬間、私の目の前に黒い穴が口を開けた。迷うことなくその中へと飛び込む。





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