プロローグ 激突ディストレイVSパラサイトグリード
空間を跳躍する浮遊感を一瞬味わい、次に目を開けた時には、見慣れたコクピットの中にいた。手には操縦桿があり、周囲には立体的なホログラムが広がっている。
「翔太! 遅い! 敵は目の前だよ!」
頭上から響く鈴のような声。戦闘をサポートする妖精、カナリアだ。金色の髪を揺らしながら、彼女が私の周りをせわしなく飛び回る。
『久しぶりの戦闘だ。腕はなまっておらんだろうな』
さらに低く、重厚な声がコクピット全体に響き渡る。
ディストレイだ。
この巨人の本体そのものが、私に語りかけてくる。
「当然だろう。私の華麗なテクニックを披露してあげるよ」
私は操縦桿を握りしめた。
私の意思が、ディストレイの巨大な拳へと伝わっていく。
「行くぞ、ディストレイ!」
深緑の瞳が輝き、赤き巨神が咆哮を上げて、闇の中で受肉したパラサイトグリードと対峙した。
決戦の火蓋が切られる。
受肉したパラサイトグリードは、崩れ落ちた廃病院の瓦礫を撒き散らしながら、その醜悪な姿を完全に露わにしていた。黒く爛れた肉塊のような巨体からは、無数の触手が脈打つように伸びており、その一つ一つが生き物のように独立して蠢いている。屋根を突き破ったその姿は、まさに生きとし生ける全ての敵というに相応しい絶望の塊だ。
「翔太、右から触手が来るよ!」
カナリアの警告と同時に、私は操縦桿を大きく右に倒し、右足のペダルを踏みこんだ。
ドォォォン!!
左肩のバーニアと背中のスラスターを全開にしたディストレイの巨体は、アスファルトを削りながら俊敏に反応し、右から迫っていた黒い触手を回避する。地面を叩きつけた触手がアスファルトを容易く貫き、砕けた路面が舞い上がった。当たれば装甲が破壊されかねない一撃だ。
「近接戦に持ち込む!」
スラスターから『浄化の炎』を噴出させながら一気に前進をする。
「オリルフィアを出す」
ディストレイが右腕を振り上げる。
シャキィィン!
右腕の甲部分に収納されていた長剣、オリルフィアが伸びて姿を現す。黄金の縁取りが施された真紅の刀身が、街頭の光を反射して鋭く煌めく。
「相棒! オリルフィアに『浄化の炎』を!」
『心得た ぬああああ!』
ボッ! と真っ赤な炎がオリルフィアを包み込んだ。負の念を糧とする癒しの炎は、パラサイトグリードにとって最も猛毒な灼熱だ。
「どうだ! 私が使う炎とは違って、オリジナルの炎だ。範囲も威力も桁が違うぞ! はぁぁぁっ!」




