第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――代償
映像が切り替わる。闇に包まれた蔵の中で、何かが蠢いている。そして、その前にひれ伏す人間の姿。
「『人の悪意や呪いを秘めた物を集めて、我に捧げよ。さらば、見返りとしてお前たちに幸運を与えてやる』」
「そんな……神だった者が、なぜ……」
「彼らは、神である土地神の甘い囁きに耳を傾けてしまいました。遠出に行っては現地で見つけた呪物を手に入れ、蔵に納める。その見返りとして、彼らに幸運が舞い込むよう、因果律を操作したのです」
『因果律の操作……そんなことが可能なのか』
ディストレイの声が、私の脳裏に響く。
「さらに土地神は、彼らから『神』という名前も奪いました」
「名前を奪う……?」
「彼らの名前に宿っていた神の力を奪うためです。神ノ上家から『神』の一字を奪い、今の上野と改名させました。これにより神の力を手に入れた土地神は、さらに世界の負の力を吸収するため、呪われた品物を運ばせては、あの蔵の中で力を蓄えていたのです」
私は思わず蔵の方角を見た。あの蔵の中で、五百年もの間、土地神が力を蓄え続けていたのか。
「私たちご神木は警戒しつつも、土地神様の封印に大量のエネルギーを使っていたため、手出しはできない状態でした。百年、二百年、三百年と過ぎていくと、警戒は薄れていき、四百年が経つ頃には、警戒を解いて封印へ力を注いでいました」
「それが……間違いだったのか」
私の言葉に、精霊は哀しげに揺れた。
「十年前――突然、土地神は上野家との契約を破棄しました」
「なぜ急に?」
「わかりません。しかし、推測はできます」
「それは?」
「おそらく土地神様と神ノ上家が交わした契約は等価交換だったと思われます。始めは土地神にとっては素晴らしい契約だったはずですが、段々とその等価が変わってきたのでしょう。天秤がいつかは傾くように……土地神様にとって破棄した十年前は必要なくなったのでしょう」
「なるほど」
「これにより神の加護がなくなった上野家には、幸運が訪れることはなくなり、逆に今までの反動から、どんどん不幸が舞い込んでいきました。それと同時に、吸収することをやめた蔵の中には、負の力が溜まり出していきます。このままでは蔵の中から負の力が溢れ出すのも時間の問題と感じた私たちは、結界を張りつつ、可能な限り負の力を浄化していきました。しかし、溜まっていく負の力に、浄化できる容量が追いつくことができませんでした。さらに、今まで何もしてこなかった土地神が、私たちご神木にまで負の力を逆流させて、攻撃を仕掛けてきたのです」




