第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――惨劇そして……
老若男女、逃げ惑う人々が次々と斬り捨てられていく。
悲鳴と怒号が飛び交い、家々に火が放たれた。
「村人全員が、あっという間に殺されてしまいました。その時の土地神様の慟哭は、計り知れないものでした」
映像の中の光の輪が激しく揺らめく。怒り、悲しみ、恐怖、後悔、無念、殺意、苦しみ、絶望――あらゆる負の感情が、土地神の中に流れ込んでいく。
「そして……土地神様は禁忌を起こしました」
光の球体の輝きが一瞬暗くなる。
「土地を守護する役目を放棄し、神の座すら捨て去ることで、土地神様はこの地上に受肉したのです」
「神が……受肉……?」
柿谷の声が震えている。
「そして、その土地にいた百人ほどの兵を、その強大な神の力で、皆殺しにしてしまいました」
映像の中で、何かが爆発するように光が広がる。
そして、兵たちの断末魔の叫びが、一瞬だけ聞こえた気がした。
「この出来事は、八百万の神々に衝撃を与えました。いかに役目と神の座を放棄したとしても、一柱の強い思いだけでこの地上に受肉できるほど、世界は甘くはないからです。後に分かったことですが、この時に邪神と呼ばれる、死と深く関わっている神の力が、土地神様の強い願いによって引っ張られてしまい、邪神と融合して起きてしまった悲劇だったのです」
「邪神……」
私は無意識に拳を握りしめていた。
「これにより、土地神様は神の座から落ち、悪鬼へと成り下がりました」
精霊の声が、哀しみに震える。
「神々は、これ以上土地神様が人を殺さないよう、ご神木を新たに六柱増やし、他の神とご神木七柱の力を合わせて土地神様を封印しました。若木だった私には、リーダーとして他の六柱と一緒に、この土地の新しい守護の役目が託されました。そして神々は、この地から去っていったのです」
私は顔を上げ、目の前のご神木を見上げた。樹齢千年を超えるこの巨木が、五百年前に託された使命を、今はただ一人で守り続けてきたのか。
「それから百年の時間が流れ、この土地にも新しい人間たちが住むようになります。その中で、商いを生業としていた富豪の家が、地主としてこの土地を収めていました。その名を神ノ上家と言います」
「神ノ上……上野の旧姓か」
私の呟きに、精霊は静かに肯定した。
「商いをしながら何不自由なく生活をしていた彼らですが、ある時、事業に失敗してしまい、借金を負ってしまいました。そんな彼らに、悪鬼と化した土地神が、私たちご神木の目を盗んで取引を持ちかけたのです」




