第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――ご神木からの依頼
「柿谷、落ち着け。今はそういう場合じゃない」
「わ、わかってるけど! だって精霊だぞ⁉ カナリアもそうだけど、こんなに近くで見たことなんて……!」
私は興奮する柿谷をひとまず放っておき、光の球体に向き直った。
「あなたが私たちの前に姿を現したのは、何か理由があるんですか?」
私の問いに、光の球体は一層輝きを増した。
(はい。神の力を持ちし人の子よ、どうかこの地を救っていただきたいのです。さもないと、この地そのものが、消えてしまいます)
「この地が……消える?」
あまりにも突拍子もない言葉に、私は思わず聞き返した。
柿谷もまた、カメラを取り出す手を止め、真剣な表情で光の球体を見つめている。
(はい。今、この地には、計り知れぬほどの負の念が渦巻いております。それは日を追うごとに膨れ上がり、やがてはこの地そのものを呑み込み、消し去ってしまうでしょう)
「計り知れぬほどの負の念……それはもしかして」
私は顔を上げ、蔵のある方角を見つめた。
「あの蔵が原因ですか?」
光の球体は、静かに肯定した。
(はい。あの蔵は、本来この地に集まる負の念を封じるために建てられたものです。しかし、あまりにも多くの呪いの品が納められたことで、封じきれなくなっております。このままでは、遠くないうちに封印が破れ、中の負の念が一気に溢れ出すでしょう。そうなれば、この地はもちろん、周辺一帯が大きな災いに見舞われます)
「それはおかしいですね」
私は光の球体に向かって一歩踏み出した。
「私も確認したが、あの蔵の中には確かに強力な負の念が溜まっています。それは覆ることのない事実です。だけど、それだけでこの地が消えるというのは、どうも腑に落ちないんですよね」
私の言葉に、光の球体は静かに輝きを増した。
「あの負の念は確かに膨大です。しかし、それでも“土地が消える”ほどの規模とは思えない。せいぜい、この周辺に住む人々に対して、何かしらの悪影響を及ぼすぐらいだと私は見ているんですが……どうです?」
(それは間違っています)
精霊の声が、はっきりと私たちの頭の中に響いた。その声は先ほどまでの優しさを保ちながらも、どこか切迫した響きを帯びている。
(神の力を持ちし人の子よ、あなたが蔵で感じた“呪い”など、私たちが結界で封印しているものに比べれば、微々たるものでしかないのです)
「微々たるもの……だって?」
柿谷がごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。




