第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――ご神木
『数百年、いや、もしかすると千年以上もの間、この土地を守り続けてきたのだろう。だが、今はもう限界が近い。このままでは、遠くないうちに完全に枯れ果ててしまうだろう』
私はディストレイの言葉に、胸が締め付けられる思いがした。
千年以上もの間、誰に知られることもなく、この土地を守り続けてきた存在。それが今、静かに息絶えようとしている。
「何か……できることはないのか?」
私は無意識のうちに、そっと樹木の幹に手を触れていた。
その瞬間――
樹木全体が、まばゆい光に包まれた。葉の一枚一枚が金色に輝き、幹からは温かな波動が溢れ出す。私は思わず目を細めた。
「な、なんだ⁉」
柿谷が驚きの声を上げる。
光は徐々に収束し、私たちの目の前に、ふわふわと浮かぶ小さな光の球体が現れた。それは淡い金色に輝き、見る者の心を和ませるような、不思議な温もりを放っている。
「これは……精霊?」
柿谷が眼鏡を外し、目をこすりながら言った。
その時、私たちの頭の中に、直接語りかけてくる声が響いた。
(神の力を持ちし人の子よ)
それは言葉というよりも、純粋な意思がそのまま伝わってくるような感覚だった。
声は女性的で、優しく、それでいてどこか哀しげな響きを帯びている。
「うわっ! なんだ今の! 頭の中に直接……!」
柿谷が飛び上がらんばかりに驚く。
「テレパシーだ。相手はこの光の球体……おそらく、この樹木の精霊だ」
「精霊⁉ カナリア以外にも精霊っているのか!」
「いるさ。世界中に、様々な形で存在している」
(説明をありがとう、神の力を持ちし人の子よ)
光の球体――ご神木の精霊は、ゆっくりと私たちの周りを漂いながら、言葉を続けた。
(私はこのご神木の精霊。長い間、この地を見守ってまいりました。しかし、その力も尽き果て、人知れず朽ち果てる運命だと思っていた矢先……神の力を持ちし人の子が触れた手から、神の力が流れ込んできたのです)
「神の力……?」
私は自分の右手を見つめた。どうやら、私が樹木に触れた時、無意識のうちにディストレイの力が流れ込んだらしい。ブレスレットの光が、先ほどよりも強く輝いている。
(おかげで、このような形ではありますが、何とか現れることができました。神の力を持ちし人の子よ、あなたに感謝を捧げます)
光の球体が、私に向かって軽くお辞儀をするように上下に揺れた。
「すげえ……本物の精霊だ……写真撮っていいかな……いや、でも失礼か……」
柿谷が興奮で早口になりながら、ショルダーバッグからカメラを取り出そうとしている。




