第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――当主へ相談
「数日間……!」
柿谷が絶句する。
それもそうだろう。住宅街の真ん中で、数日間も建物が燃え続けるなど、近所迷惑どころの騒ぎではない。消防車も出動するだろうし、場合によってはニュース沙汰になる。
「だいたい、普通の蔵ならあれだけの負の念を閉じ込めておけるはずがないんだ。外に漏れ出して、とっくに周囲一帯が呪われていてもおかしくない」
「そういえば……さっきまでは、外からは何も感じなかったよな」
「ああ。つまり、あの蔵自体に何か仕掛けがあるんだ。あれだけの呪いを封じ込められる、特別な何かが」
私は腕を組み、蔵を見上げた。
白壁の土蔵造り。外見は普通の蔵と変わらない。しかし、よく見ると壁のところどころに、かすかに墨で書かれた梵字のようなものが浮かび上がっている。おそらく、建築時か、あるいは後年に施された結界の類だろう。
「とにかく、まずは当主に話を聞こう。あの蔵に何を入れているのか、どこから集めてきたのか。それを知らなければ、手の打ちようがない」
私たちは母屋へと戻り、応接間で待っていた上野当主に、蔵の中で起きたことを包み隠さず話した。
上野当主は、私たちの話を黙って聞いていた。そして深くため息をつくと、重々しく口を開いた。
「……やはり、そうでしたか」
「お心当たりが?」
「ええ。実は、上野家が代々蒐集してきた骨董品の中には、いわゆる『曰くつき』の品が数多く含まれております」
上野当主は窓の外、蔵のある方角を見つめながら続けた。
「古い言い伝えがありましてな」
上野当主は、窓の外にそびえる蔵を見つめながら、ゆっくりと語り始めた。
「上野家には、代々伝わる奇妙な言い伝えがございます。『旅をした場所で曰く付きの物を買い、蔵に納めよ。されば、その災いが幸運へと転じ、家は永劫の繁栄を約束される』と」
「曰く付きの物を……幸運に?」
柿谷が眉をひそめる。オカルトライターとして、そんな話は初めて聞くという顔だ。
「はい。普通に考えれば、曰く付きの品など家に入れたがらないものでしょう。しかし上野家では、むしろ積極的に、そういった品を探し求めてきたのです。世界中を旅し、呪いの品、曰く付きの骨董、曰く付きの美術品……あらゆる『災いの品』を買い集め、あの蔵に納めてまいりました」
私は上野当主の言葉を頭の中で整理しながら、先ほどの蔵の中を思い出した。あの膨大な負の念。世界中から集められた曰く付きの品々が、何百年もの間、あの蔵の中で眠り続けているのだとしたら――あの量も納得できる。




