第四話 旧家の依頼(堕ちた神を撃て)――原因
『そうじゃ。最初は偶然じゃろうと思った。じゃが、さすがに六人連続となると……わしもこの歳でな、悪い予感がしてならんのじゃ』
松山の声が震えている。長年この業界で生きてきた老人の直感が、危険を告げているのだろう。
『翔太くんが、オカルト関係の品物にも対応していることを思い出したんだ。どうだろうか、この依頼を引き受けてはくれんか?』
私は受話器を肩に挟み、無意識に左手のブレスレットに触れた。
三色の輝石が、静かに光を放っている。
「分かりました。その依頼を引き受けましょう」
『本当か⁉ ありがとう』
「いえいえ、私もその依頼に興味が出てきたしたので」
私が軽く笑ってそう言うと、松山はホッとしたように息を吐いた。
『そうか……すまんのう、翔太くん。ありがとう。依頼主の連絡先と住所を送る。本当に気をつけて行ってきてくれ』
「わかりました。では、また後ほど」
私は受話器を耳から話し、電話を切ろうとした――その瞬間だった。
受話器の穴から、どす黒い煙のようなものがゆらりと立ち上った。それはまるで意思を持っているかのように、私の手首に絡みつこうとする。
「……ッ!」
私は瞬時に反応した。右手の平から『浄化の炎』を呼び出し、黒い煙を包み込む。
ジュッ……という微かな音とともに、黒い煙は浄化の炎に焼き尽くされ、跡形もなく消え去った。
「なるほど……これが原因か」
受話器を置き、私は燃え尽きた黒い煙の残滓が消えた空間をじっと見つめた。
「かなり強力な負の念だったが……」
左手のブレスレットが、警戒するように熱を帯びている。
私は手のひらに残る『浄化の炎』の感触を確かめながら、深く息を吐いた。
『翔太、今の負の念からパラサイトグリードの気配を感じた』
ディストレイの重厚な声が、私の脳裏に直接響く。
その声には、普段の冷静さの中に、かすかな緊張が混じっていた。
「はぁ、やはりそうか。電話回線を通じて呪いを送り込むとは……厄介な手合いだな」
『ああ。それも、ただの残留思念などではない。明確な殺意を持った呪いだ。おそらく、依頼を受けた鑑定士たちの事故は、すべてこの負の念が引き起こしたものだろう』
私はカウンターに肘をつき、窓の外を見た。
雨はますます激しさを増し、街路樹の葉を容赦なく打ち付けている。時折、遠くで雷鳴が轟き、店内の照明がかすかに明滅した。
「松山さんに危害が及ばずに済んで、本当に良かった」
『ああ。だが油断は禁物だ。主よ、今回の依頼には間違いなくパラサイトグリードが関わっている。それも相当に狡猾な奴だ』




