プロローグ 救出
いかにパラサイトグリードとは言え、あれほど強力な炎の前では跡形もない。ただ、私の体ではあの威力の『浄化の炎』は耐えられないので、使用できないのは残念でもある。
「……アツ……イ…ノ……バ…」
少女が悲鳴を上げ、後退する。
私は間合いを詰め、今度は自分の右手から『浄化の炎』を出して、ためらうことなくその胸元に炎を押し当てる。威力は低くても『浄化の炎』だ。
すぐに少女は燃え上がり内側から発光し始めた。彼女自身の霊を縛っていた負が焼き払われ、やがて安らかな表情を浮かべて光の粒子となって消えていった。
しかし――。
「……どういうことだ? 『半霊体』がここまで弱いとは」
何度もパラサイトグリードと戦ってきた私だからこそ感じる違和感。
『半霊体』は彼ら固有の能力を持ち、それが厄介で毎回苦労させられるのだが、今回は黒い霧をゴムのように伸ばすことしかしていない。
影響を受けたあの老人の霊も黒い霧を使用していたことから、おそらく先ほどのパラサイトグリードが元凶だと思うが――。
「考えても仕方ないな。今は目の前のことを片付けないとな」
あまりしっくりこないが私は頭を切り替えて、すぐに三人の若者に向き直った。
彼らはまだ円陣の中で硬直し、虚ろな目で何かを呟き続けている。パラサイトグリードに精神を浸食され、負の感情を搾り取られている状態だ。このままでは、彼らの負が新たなパラサイトグリードを呼び寄せるか、あるいは彼ら自身が餌として食い尽くされるだろう。
私は三人の前に立ち、『浄化の炎』を浴びせると、瞬く間に燃え上がり彼らの取り巻く負の念を燃やしていく。
やがて彼らの体が淡い光に包まれた。彼らの唇から漏れていた不気味な囁きが止み、代わりに苦悶の声が上がる。心に巣食っていた恐怖や絶望が燃え上がり、浄化されていく痛みだろう。それは傷つく痛みではなく、膿が抜ける痛みだ。
「うっ……あぁ……」
「ここは……俺…」
「助けて……」
三人の目から虚ろな光が消え、正気を取り戻したような瞬きが戻ってきた。炎がフッと消えると、彼らはその場に崩れ落ちたが、意識ははっきりとしているようだった。
「三人とも、大丈夫か?」
私は彼らに手を差し伸べた。
「あーはい。大丈夫?」
「むしろ、気分が良い?」
「ああ。体も軽いぞ」
三人はその場で飛び跳ねたり、体を動かして元気アピールをする。
どうやら、全ての悪い感情が消えて、肉体も絶好調になったようだ。
「とりあえず、詳しい話は後にして、こんな陰気臭い場所から出ようじゃないか」




