第三話 遊園地に潜む悪意――七つの闇の守護者
だが、ナイトメアの姿はすでに消えていた。代わりに、その嘲笑だけが夢の残響として木霊する。
目が覚めた時、私は自宅のベッドの上にいた。
カーテンの隙間から、夕暮れの橙色の光が差し込んでいる。どうやら半日以上眠っていたらしい。体中の倦怠感はまだ残っているが、傷の痛みはだいぶ引いていた。
「起きたか、翔太」
脳裏に直接響く、重厚な声。ディストレイだ。どうやら私が目覚めたのを感知したらしい。
「ああ……今、起きた」
私は上半身を起こし、ベッドの端に腰掛けた。まだ体は重いが、先ほどよりは幾分マシだ。窓の外では、夕日が街を茜色に染めている。
「ディストレイ、聞いてくれ。夢で妙なものを見た」
私は夢での出来事を詳細に伝えた。ピエロの過去。彼が寂しさに付け込まれ、力を与えられ、破滅へと導かれた経緯。
そして、ナイトメアと名乗る存在が現れたこと。デスシャドウという王の名。七つの闇の守護者たち。
「――奴は言っていた。『我らが王、デスシャドウ様を守護する七つの闇の一つ』だと。そして、俺の力を試すための実験だとも」
私がそう言い終えると、ディストレイは長い沈黙の後、重々しく口を開いた。
『……そうか。ついに、奴らが動き出したか』
その声には、普段の彼からは想像もつかないほどの警戒と、かすかな怒りが込められていた。
「知っているのか、ディストレイ?」
『ああ。お前が夢で見た存在――ナイトメアと名乗った闇。そして、デスシャドウと呼ばれる王。それらは、はるか太古から存在する、この世の負の感情そのものが具現化した存在だ』
私はごくりと唾を飲み込んだ。
『思い出した。我らはかつて、奴らと戦ったことがある。いや……戦ったというよりも、奴らの侵攻を食い止めようとした、と言うべきか』
ディストレイの声が、わずかに震えているように感じた。巨神である彼が、これほどまでに動揺を見せる相手。それが、七つの闇という存在なのか。
「七つの負の感情……ナイトメアは『寂しさを司る』と言っていた。ということは、残りの六つも何かの感情を……」
『そうだ。奴らは人間の持つ七つの負の感情――怒り、悲しみ、恐怖、憎しみ、罪悪感、絶望、そして寂しさ。それぞれを司る守護者が存在する』
私は記憶を整理するように呟いた。
「ピエロが付け込まれたのも、その『寂しさ』だった。奴は、寂しさを抱える者に近づき、力を与え、最終的にはパラサイトグリードへと変貌させる……ナイトメア、恐ろしい奴だ」




