第三話 遊園地に潜む悪意――ピエロの過去
場面が切り替わる。
夜の遊園地。閉園後の誰もいないパークで、ピエロは一人、ステージの上に座り込んでいた。
その手には一枚の封筒。震える指で中を開けると、一枚の書類が入っている。
「解雇……通知……?」
ピエロの声がかすかに震えた。
「なぜ……? 僕は……子供たちを笑顔にしたくて……」
そこに、スーツを着た数人の男たちが近づいてくる。
経営陣だろう。
彼らは冷たい目でピエロを見下ろした。
「お前のパフォーマンスは時代遅れなんだよ。今の子供たちは、もっと刺激的なものを求めている」
「でも……でも……!」
「それに、お前みたいな冴えない男がピエロをやってても、誰も笑わないんだよ。むしろ、薄気味悪いってクレームが来てる」
男たちの嘲笑が、静かな夜の遊園地に響く。
「薄気味……悪い……?」
ピエロはうつむいた。
手にした解雇通知が、涙で濡れていく。
「僕は……ただ……みんなを……」
場面がまた変わる。
荒廃した遊園地。
ドリームパークはすでに閉園し、取り壊しを待つばかりの廃墟と化していた。
そんな中、ピエロは一人、崩れかけたステージに立っている。
もう観客はいない。子供たちの笑い声も聞こえない。
ただ、風が吹き抜けるだけの静寂。
「寂しい……寂しいよ……誰か……誰か僕と遊んで……」
ピエロが呟いたその時だった。
「……寂しいのかい?」
闇の中から、声が聞こえた。
ピエロが顔を上げる。
そこに立っていたのは、深い紫色のローブを纏った一人の人物。フードを深く被り、顔は見えない。
しかし、その存在からは底知れない闇の気配が漂っていた。
「誰……? 君は……?」
「私はお前に力を与えられる者だ。お前の寂しさを埋め、永遠に遊び続けられる力をな」
ピエロの目に、狂気にも似た光が宿る。
「永遠に……遊べる……?」
「ああ。お前はこの遊園地の主となれる。訪れる者たちと、永遠にゲームを楽しむがいい。ただし……」
ローブの人物が、かすかに笑った気配がした。
「ゲームに負けた者は、お前の一部として、永遠にこの遊園地で遊び続けてもらう」
それが、破滅への第一歩だった。
ピエロはその誘いに乗り、悪意を吸収し、人ならざるものへと変貌していった。犠牲者たちの魂を取り込み、遊園地は悪意の坩堝と化した。
そして、あの夜を迎えたのだ。
場面は一気に加速する。
ピエロが悪意を吸収し、怪物へと変貌していく過程。
犠牲者たちの悲鳴。
笑顔だったはずの遊園地が、恐怖の空間へと塗り替えられていく。




