第三話 遊園地に潜む悪意――ドリームパーク事件終了
「お前はどうする? スクープが取れたんだろ。さっさと記事にでもすればいい」
「そうしたいのは山々なんだけどな……さすがに今回のネタは、そのまま書くわけにはいかないだろ。巨神が出てきて怪物と戦いました、なんて記事、誰が信じるんだよ」
柿谷は苦笑いを浮かべ、ポケットから煙草を取り出した。火をつけ、深く吸い込んで、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
「でもまあ、ぼかせる部分はぼかして、なんとかオカルト記事にはまとめるさ。『廃遊園地に巣食う悪意の正体とは? 現役霊能者が語る壮絶な除霊の一部始終』……ってな」
「ほどほどにしろよ」
「わかってるって」
私は劇場の天井を見上げた。朝日が、崩れた穴から差し込み、埃っぽい空気を金色に染めている。
「この遊園地に巣食っていた悪意は消えたが、ピエロに力を与えた『上位存在』とやらはまだ健在だ。そして、あいつは確実に俺のことを知っている」
『そうだな。今回の一件は、おそらく我々への挨拶代わりだ。本命は、これから動き出す可能性が高い』
ディストレイの声に、私は無言で頷いた。
朝日が、遊園地の廃墟を照らし出していた。長い夜が明け、ドリームパークは、ただの静かな廃墟へと戻っていく。
だが、これで終わりではない。むしろ、これは始まりに過ぎないのかもしれない。
ピエロに力を与えた存在。私を知っている何者か。それが、この先どんな脅威をもたらすのか――今はまだ、誰にもわからない。
「あっ‼」
「どうした。急に声出して」
煙草を吸い終えた柿谷が驚愕の声を上げた。
一体何が起こったのだろうか。
「俺たち、森山さんの車でここへ来たよな」
「そうだが……あっ、車」
そう、二人は森山の車でここまで来たのだ。
しかし、彼女は妹の付き添いで救急車に乗って行ってしまった。
二人はここから帰る手段を失ったということだ。
「どうしよう、翔太」
「……そんなの決まっている、ついてこい」
私は柿谷を引き連れて、とある人物に会いに行った。
「どうか、家まで送ってください。横目警部」
「……えっ⁉」
いきなり頭を下げた私を見て困惑していた横目警部。私が事情を話すと笑って店まで送ってくれた。
「なあ、翔太」
横目警部の車を見送った後、店の駐車場に置いていた自分の車に乗り込んだ柿谷が不意に口を開いた。
「ピエロが言ってた『あの方』ってのは、いったい何者なんだろうな?」
「……わからない。だが、少なくともパラサイトグリードの上位存在であることは間違いないと思う。奴に力を与え、俺の情報も流していた。そして何より――」




