第三話 遊園地に潜む悪意――再び劇場へ
劇場は、もはや原型を留めていなかった。
私は距離を縮めながら『裁きの雷弾』でトランプの束を焼き尽くし、飛来するナイフを破壊する。逆にピエロはひたすらに笑いながら、ボールをトランポリンのようにして跳ねたり、天井から垂れるロープを掴んで空中ブランコのようにして空を駆けて、私から距離をとり次々と生み出す新しい武器を投げつける。
私がその対処に追われている隙をついて接近戦を仕掛けてくる。
まったく厄介な相手である。
その結果、互いに決定打がなく、ただ時間と体力を削ったことで満身創痍だ。
私のコートは切り裂かれ、左腕には浅くない傷が走っている。ピエロもまた、体のあちこちが焼け爛れ、浄化の炎に侵食された部分が黒く炭化していた。
「はあっ……はあっ……君、しぶといねえ……」
ピエロが肩で息をしながら笑う。その顔の左半分はすでに溶け落ち、頭蓋骨に近いものが露出していた。
「そっちこそ……いい加減、諦めたらどうだ」
私もまた、荒い呼吸を隠せない。
まるで水の中で戦っているかのように体が重たく感じる。
心の中では「運動不足ではない」と思っていても、十代の時よりも全然動けていないので、体のいたるところから肉体が悲鳴を上げている。
明日は筋肉痛だな。
帰ったら、ジムにでも通うようにしよう、と心で硬く決意をした私は、体を起こしてピエロを睨む。
「諦める……? 僕が……? 冗談でしょ……これは遊びなんだよ……楽しい遊び……終わらせるわけないじゃない……」
ピエロが右手を掲げる。
その手に、いつの間にか巨大なハンマーが握られていた。
どこから出したのか、マジックの道具のような、それでいて明らかに殺意のこもった武器だ。
「それじゃあ……そろそろクライマックスといこうか……!」
「望むところだ……!」
互いに駆け出そうとした、その瞬間だった。
劇場の扉が、勢いよく開かれた。
「翔太!」
柿谷の声だ。私は反射的に動きを止め、ピエロもまたハンマーを振りかぶった姿勢のまま硬直する。
入り口に立っていたのは、柿谷と森山、そして三人の生存者たちだった。
森山は自分の妹を背負い、柿谷は虚ろな二人を連れている。だが、その目にはまだ虚ろさが残っているものの、確かに生気が戻り始めていた。
「見つけてくれたのか……!」
私の口元に、思わず笑みが浮かぶ。
ピエロは、ゆっくりとハンマーを下ろした。溶けかけた顔に、驚愕の表情が広がっていく。
「うそ……見つけたの……? 子供たちや……あの園長まで倒して……?」




