第三話 遊園地に潜む悪意――特殊銃弾
柿谷の指示に、森山は迷わず従った。
「了解!」
彼女は引き金を引いた。
発射音とともに、銀色の弾丸が二発一直線に園長の頭部へ飛んでいく。着弾と同時に、真紅の炎と黄色い雷が炸裂した。
「グォオオオオ!!」
園長の霊が苦痛の叫びを上げる。無数の目のうち、数個が弾け飛び、黒い霧が噴き出した。
「効いてる! でも一発じゃ倒せない……!」
「こうなったら、全部使いましょう! 同じ場所を狙ってください!」
森山は三発目、四発目と連続で発砲した。全ての弾丸が正確に頭部の目の集合体に命中し、浄化の炎と裁きの雷が園長の核を削っていく。
「ギ……ギギ……! よくも……よくも私の園を……!」
園長の霊が苦しみながらも触手を伸ばす。その一本が、地面に座り込んでいた陽子に向かって一直線に迫った。
「陽子!」
森山は考えるより早く動いていた。妹を庇うように覆いかぶさり、同時に引き金を引く。命中した園長の体は『永久の氷』の効果で、一瞬で凍り付き触手の動きも止まる。
「これで!」
森山は残りの弾丸を園長の霊めがけて一斉に発射する。
銀色の光が、夜の廃遊園地を切り裂いた。赤、黄、青の輝きが園長の霊の胸部に集中し、全ての弾丸を受け止めた彼を中心に大規模な爆発が起きる。
「ギャアアアッ!!」
断末魔の叫びとともに、園長の霊は炎に包まれて崩れ落ちていった。黒い霧が急速に晴れていき、後に残ったのは崩れた遊園地の景色だけだ。
「やった……の…?」
森山は浅い息を繰り返しながら立ち上がった。
全身から力が抜けていく。
十五発全てを使ってしまった。拳銃は空っぽだ。
「さすが、刑事さんだ。全弾、命中。見事です。気配も感じられないので、あれで消滅しましたね」
柿谷が安心したように微笑んだ。だがその表情はすぐに引き締まる。
「でも、まだ終わってません。翔太のところに戻りましょう。あいつのことだからきっと大変なことになってるはずです」
「そうですね!」
森山は陽子を背負い、柿谷は他の二人の生存者を促して歩き始めた。彼らの足取りは相変わらず虚ろだったが、先ほどよりは確実に人間のそれであった。
劇場へ向かう道すがら、森山は掌を開いて見つめた。翔太から預かった『特殊銃弾』が入っていた弾倉は既に空だ。これがなければどうなっていたことか──彼女は胸の中で感謝した。しかし同時に思った。「私にももっと力があれば……」
と。
心の奥底で芽生えつつある想いに戸惑いつつも、今はそれを胸に秘めたまま前進する他なかった。
そして舞台は再び劇場へと戻るのであった。




