第三話 遊園地に潜む悪意――攻防
ピエロがナイフを投げた。三本のナイフが弧を描きながら私に迫る。
「遅い!」
私は左手から『裁きの雷弾』を放った。極太の雷撃がナイフを一瞬で蒸発させ、そのままピエロを直撃する――はずだった。
「甘いよ」
ピエロの姿がかき消える。雷弾はステージの幕を焼き尽くし、壁に大穴を開けた。
「上か!」
私は反射的に左手を上に向け、再度『裁きの雷弾』を放つ。天井から降下してきたピエロが、雷弾を避けて空中で身を翻した。
「あれを避けるかよ」
ありえない動きだ。
完全に重力を無視している。
「さすがだね……でも……!」
着地したピエロが両手を床に叩きつけた。瞬間、ステージの床から無数の手が生えてくる。黒い霧でできた手だ。それらが一斉に私の足首を掴もうと迫る。
「小賢しい!」
私は右足を踏み鳴らした。『永久の氷』の力が展開され、床から生えた手が一瞬で凍りつく。氷は瞬く間に広がり、ステージ全体を覆い尽くした。
「ぐっ……!」
ピエロの足元も凍り、動きが止まる。
「三色の力……『浄化の炎』に、『裁きの雷弾』、そして『永久の氷』……本当に、噂通りの力だ……」
「噂になるほど、俺は有名じゃないはずだがな」
「あの方が言ってたよ……紅翔太は危険だって……できることなら、戦わずに逃げろって……」
ピエロが凍りついた足を無理やり引き千切る。黒い血のようなものが飛び散ったが、すぐに黒い靄が足を包み込み、それが消え去ると元通りに復元していた。
「でも、僕は逃げない。だって……ここは僕の遊園地だから……!」
ピエロの体から、再び禍々しい力が溢れ出す。
さっきよりもさらに濃密で、凶悪な気配だ。
劇場の壁が震え、天井のシャンデリアがガタガタと揺れる。
「その力……本当に借り物なんだな。お前自身の力じゃない。だから、こんなにも不安定だ」
「うるさい!!」
ピエロが絶叫し、両手から黒い波動を放った。
私は左手を銃の形に構え直した。指先に、再び黄色い雷が収束していく。
そして右手からは、『浄化の炎』を出す。
「何発でも来い。そして、何度でも教えてもらうぞ。その『あの方』とやらの正体をな」
迫りくる黒い波動を『浄化の炎』で消して、『裁きの雷弾』をぶっ放す。
劇場の上では黒と赤と黄色の閃光が、まるで夜空に浮かぶ星々のように美しくも禍々しく、そして儚く輝いていた。




