第三話 遊園地に潜む悪意――睨み合い
「あらら……巨神を引っ込めちゃった……怖くなったの……?」
ピエロが小ばかにしたように笑う。
「どうかな」
私は背筋を伸ばし、ステージの中央で余裕の笑みを浮かべるピエロと再び対峙した。
通常の召喚の場合は、ブレスレットを破壊することで、それに刻まれている魔方陣がディストレイの力で発動する仕掛けとなっているので、私の負担は全くない。
しかし一部召喚となれば話は違う。
ディストレイの力は私の体と混ざっている状態となっているので、魔方陣を展開するカギであるディストレイの力を引き出すことは、私の体力を消費することと同じなのである。
長時間の維持は言い換えるならば、休みなくマラソンを走っていると考えてくれればいい。
高校卒業して以来運動をしてこなかった私にとっては中々しんどい行為でもある。
なので、一部召喚は強力ではあるがあまり使用は控えたい奥の手であるのだ。
「森山さん、柿谷。予定通り、君たちは三人を探してくれ」
「でも、翔太……!」
「大丈夫だ。こいつは確かにさっきより強くなってる。だが、俺もまだ本気を出していない。それに……」
私はピエロを真っ直ぐに見据えた。
「こいつから聞き出さなきゃいけないことができた。上位存在の情報は、心霊対策課でも掴んでいない。これは、貴重な機会だ」
ピエロの笑みが、わずかに引きつった。
どうやら、私が臆することなく挑発に乗ってきたことに驚いたらしい。
「……すごい自信だね。でも、今の僕に勝てると思うの? 君の仲間が三人を見つけ出す前に……君自身が僕によってバラバラになっちゃうかもしれないのに」
「やってみなきゃわからないだろ」
私がそう言い終えると同時に、右手から真紅の炎が噴き上がった。
『浄化の炎』が、闇を照らし、劇場全体を赤く染め上げる。続いて左腕に稲妻が迸り、パチパチと音を立てて空気を焦がした。
「その力……あの方から聞いた通りだね……」
ピエロが一歩後退する。余裕の笑みはまだ浮かべているが、その目には明らかな警戒の色があった。
「だったら話は早い」
私は左手をピエロに向けた。人差し指と中指を揃え、銃の形を作る。指先に黄色い光が収束し、周囲の空気が震え始めた。
「その『あの方』とやらの名前、教えてもらおうか」
「教えるわけないでしょ……」
ピエロが右手を掲げる。その手に、いつの間にか三本のナイフが握られていた。ジャグリング用の、先端が鈍く光るナイフだ。しかし、そこに込められているのは明らかに普通の殺意ではない。ナイフの刃には黒い霧が纏わりつき、それが意思を持っているかのように蠢いている。
「それじゃあ……第二ラウンドといこうか……!」




