第三話 遊園地に潜む悪意――神の力
「たかが人の悪意を吸収した化け物程度が、神々が創り上げた神秘の力を、本当に封じ込められるとでも思ったのか?」
「……何…?」
私は思い切り右拳を握りしめ、何もない空間に向かって全力で殴りつけた。
瞬間。
ピエロの真横の空間が、バリバリと音を立ててひび割れた。そこから展開されたのは、燃え盛る真紅の魔方陣。そして、そこから飛び出したのは――
「グォォォン!!」
ディストレイの右腕が、浄化の炎を纏って顕現し、ピエロを横殴りに殴り飛ばした。
「ギャアアアアアッ!!」
断末魔の叫びを上げて、ピエロがステージの壁に叩きつけられる。白塗りの顔が焼け爛れ、浄化の炎がじわじわとその体を侵食していく。
「ば、ばかな……これは……僕の領域……なのに……!」
「領域だと? 笑わせるな」
私は魔方陣から現れたディストレイの腕の上に立ち、ピエロを見下ろした。
「お前が作ったこの空間は、確かに外界とは切り離されている。だがな、ディメンダム――巨神の力は、そんな矮小な閉鎖空間ごときで遮断できるものじゃないんだよ」
左腕のブレスレットが、三色の輝きを取り戻していく。赤、黄、青の光が、劇場全体を照らし出す。
「神々が創り上げた神秘の力は、次元そのものを超越している。お前の『領域』なんて、ディストレイにとっては薄い紙切れ同然だ。呼べない? ふざけるな。最初から、私はいつでも呼べたんだよ」
ピエロがよろよろと立ち上がる。その顔からは笑みが消え、代わりに憎悪と恐怖が入り混じった表情が浮かんでいた。
「紅……翔太……!」
「お前の正体は見えている。人の悪意を吸収して肥大化しただけの、ただのパラサイトグリードだ。確かに力は大きい。だが、それだけだ。本物の悪魔や邪神と渡り合ってきた俺にとっては、お前ごとき雑魚に過ぎない」
私はディストレイの腕から飛び降り、ステージに着地した。背後では、魔方陣がさらに広がり、ディストレイの上半身が徐々に顕現しつつある。
「このゲーム、お前の思い通りに進むと思うなよ」
ピエロが後退する。浄化の炎に焼かれた顔の半分が、ぐずぐずに溶け落ちていた。
「ま、待て……僕はまだ……」
「待たない」
私は左手をピエロに向けた。人差し指と中指を揃え、銃の形を作る。
「お前はここで終わりだ。『裁きの雷弾』」
私の指先から放たれた黄色い雷撃が、ピエロの胸を正確に貫いた。
「ギ……ィ…アアアアアアッ!!」
ピエロの体が激しく痙攣し、内側から破裂するように膨張する。白塗りの顔がひび割れ、だぶだぶの衣装が焦げ落ち、その下から黒い霧のようなものが噴き出した。浄化の力に焼かれた悪意の塊が、断末魔の叫びを上げながら霧散していく。
「やった……のか?」




