第三話 遊園地に潜む悪意――ピエロの領域
ピエロの笑みが、さらに裂けた。口角が耳元まで達し、白塗りの顔がひび割れていく。
「時間は……夜明けまで……それまでに三人を見つけられなければ……」
「残念だが、そうはならないさ」
私は『浄化の炎』を展開させる。
悪しき力を無効化するこの力の前には、パラサイトグリードの力など皆無。
案の定、拘束が解けた私はそのまま右手を柿谷と森山の肩に触れて、『浄化の炎』を移して力を無効化させる。
「サンキュー、翔太! で、どうする⁉」
柿谷がカメラを構え直しながら叫ぶ。
「二手に分かれるよう。私はこのピエロを相手にする。だから二人は三人を探して欲しい」
「でも……!」
「時間がありません! 夜明けまでに三人を見つけなきゃ、陽子さんたちが……!」
私はステージに飛び上がり、ピエロと対峙する。
背後で森山が何か叫んでいるが、構っていられない。
「行ってください! 妹さんを頼みます!」
森山は一瞬躊躇したが、すぐに刑事の顔に戻った。
「……わかりました。必ず見つけ出します」
「柿谷はその霊能力で三人を見つけてくれ。お前なら朝飯前だろう」
「当然だな。すぐに三人を見つけてみせよう。それにこれもあるからな」
胸ポケットに触れる柿谷を見て、私が渡したマッチがそこにあるのだと知らせてくれる。
「では、あとは頼んだよ」
二人が劇場の出口に向かって走り出す。その背中を見送りながら、私はピエロに向き直った。
「さて……お前の相手は俺だ」
ピエロが、くすくすと笑う。
「紅翔太……知っているよ……君のことは……」
「ほう。私も有名になったのか」
「ああ……有名だよ。我らを……滅ぼそうとする……ディメンダムの一体を……保有している……危険人物」
ピエロの声が、さっきまでとは違う。子供のような無邪気さは消え、底知れぬ悪意が滲み出ている。
「でも……ここは僕の世界……君の巨神は……呼べないよ……」
「……その根拠は?」
「この劇場は……僕の『領域』……外界とは切り離された……特別な空間……」
ピエロが一歩、前に進む。その足元から、じわじわと黒い染みが広がっていく。
「だから……君は一人で……僕と遊ぶんだ……」
私は、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「なるほど、その理屈ならば、確かに君の言っていることは正しい」
「……?」
「だがな、一つ忘れてはいないかい?」
ピエロの動きが止まる。裂けた笑みの奥で、何かが警戒するように光った。




