第三話 遊園地に潜む悪意――死のゲーム
「この中には……特別なゲストが……」
ピエロが再び手を叩く。
三つの箱の蓋が、ギィ……という音を立てて倒れた。
「陽子……!」
森山が叫んだ。
左の箱にいたのは、間違いなく森山陽子だった。写真で見た顔そのままの、二十三歳の女性。長い黒髪をだらりと垂らし、パジャマ姿で箱の中に立っている。しかし、その目は虚ろで、焦点が合っていない。
中央の箱には、同じくらいの年齢の男性。痩せ型で、腕に包帯が巻かれている。自殺未遂を起こしたという、もう一人の生存者だろう。
右の箱にも同じくらいの年齢の女性。来ている服が病院指定の服などで、おそらく精神病院で療養中の三人目の生存者だろう。彼女も他の二人と同様に目はやはり虚ろで、生気が感じられない。
三人とも、まるでマネキンのように微動だにしない。しかし、彼らは確かに生きている。胸がかすかに上下し、唇が意味のない言葉を吐き出している。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
陽子の口から漏れる声が、劇場に響く。
「陽子! 陽子!!」
森山が椅子から飛び出そうとするが、見えない力に押さえつけられて動けない。
「ふん! うーん、ダメか。そっちは?」
「いや、翔太が無理なら俺が動けるわけないだろう」
「……それもそうだな」
納得の意見だ。
体全体が、何かに縛り付けられているようで動けない。
とはいっても、方法がないわけじゃないが、奴の目的が分からないのでとりあえず静観することにする。
なぜなら、
「離せ! 陽子を返せ!」
隣で家族を人質にされた森山の怒りが爆発している姿を見ると、自然と自分は冷静でいないとと思ってしまったからだ。
その森山の絶叫にピエロはゆっくりと首を傾げた。
その仕草は、まるで壊れたからくり人形のようだった。
「返してほしい……? それなら……簡単なこと……」
ピエロが三度、手を叩いた。
瞬間、三つの箱が、中にいる三人ごと消えた。ステージ上には何も残っていない。ただ、ピエロだけが、変わらぬ笑みを浮かべて立っている。
「さあ……ゲームを始めよう……」
ピエロが右手を掲げる。その手に、いつの間にか三枚のトランプが握られていた。ジョーカー、クイーン、そしてキング。
「君たちが探すのは……三人のゲスト……この遊園地のどこかに隠れている……」
トランプがヒラヒラと宙を舞い、私たちの膝の上に落ちる。
私の膝にはジョーカー。
森山にはクイーン。
柿谷にはキング。
「見つけられなければ……三人は永遠に……この遊園地の一部になる……」




