第三話 遊園地に潜む悪意――準備
「お疲れ様です、紅さん。もしかして、森山警部補の件ですか?」
「その通りです。ちょうど今、彼女から依頼を受けました。ついては、霊障を受けた三人を至急シェルターに収容してもらいたいんです。保護には家族の同意が必要ですが、そこはどうにかしてもらいたいですが?」
「任せてください。こっちで手配します。紅さんたちは、これからどうするんです?」
「もちろん、これから現地に行きます。ドリームパークってところです」
受話器の向こうで、横目警部が息を呑む気配がした。
「……気をつけてくださいね、紅さん。あそこは、我々も手を焼いてる場所です。今までに何人も調査員を送り込んでみましたが、全員が途中で引き返してきました。中には、精神的におかしくなった奴もいるので」
「情報はありますか?」
「古い資料ならいくつかありますが、正直役に立つかどうか。あそこは何かがおかしいです。二十年以上前の閉園理由も、はっきりとはわかってないですよね」
「わかりました。柿谷がいるので、あいつに調べさせます」
「ああ、それはいいですね。こちらからの情報も柿谷さんに送っておきます」
「お願いします」
私は電話を切り、森山と柿谷に向き直った。
「決まりました。妹さんたちは、今日中に心霊対策課のシェルターに保護されます。森山警部補、ご実家に連絡を。横目警部のチームが迎えに行きます」
「ありがとうございます……!」
森山の目に涙が滲む。だが、彼女はすぐに刑事の顔に戻り、スマホを取り出した。
「柿谷はどうする? 来てくれた方が私としては安心なんだが……」
「行くに決まっているだろう。そんなスクープ、逃せるわけないだろう」
柿谷はすでに自分のショルダーバッグを肩にかけている。中にはノートパソコンと一眼レフカメラが見えた。
「一応これも持っていけ。使い方は分かっているな」
私は棚からマッチを取り出して渡す。
「おっ、これは『浄化の炎』のマッチだな」
先端の発火性混合物を『浄化の炎』の力を結晶化させた物をつけた私オリジナルのマッチである。使い方は普通のマッチと同じで、先端をヤスリ状の側面にこするだけで簡易的ではあるが『浄化の炎』を使用することができるのだ。
ただし、接続時間は十秒ほどであるので、その点は気を付けてもらいたい。
「そうだ。危険な霊と遭遇したら、それで撃退をしてくれ」
「ああ、助かるよ」
柿谷は霊能力者ではあるものの、私とは違って霊を払うことはできない。なので、このマッチは彼の護身用として、一緒に行くときには渡している。
「森山警部補、あなたはどうします?」
「私も行きます」
森山はきっぱりと言った。その目には、先ほどまでの涙はない。刑事の顔だった。




