第三話 遊園地に潜む悪意――ドリームパーク
「こちらは?」
森山が柿谷を見る。
「ああ、俺は柿谷信也といいます。オカルト雑誌のライターで、こいつの中学時代からの友人です。もし差し支えなければ、俺も同席しても?」
「私からもお願いします。こいつも霊能力者ですので、心霊・オカルトでの悩みならば、心強いですから」
森山は一瞬考え込んだが、やがて小さく頷いた。
「お願いします」
彼女はカウンターの椅子に腰を下ろし、深く息を吐いた。
疲れている。
それも、ただの疲労ではない。深い悲しみと、必死に抑え込んだ焦燥が、その目に潛んでいる。
「お茶でもいかがですか。話はそれからで」
「……ありがとうございます」
私が煎れたほうじ茶を一口含み、森山は幾分か表情を和らげた。彼女はカップを両手で包み込むように持ち、静かに話し始めた。
「私には、陽子という妹がいます。二十三歳で、大学院に通っていました」
「いました……?」
「はい。今は、部屋に引きこもっています。一ヶ月前から、ずっと」
森山の声が、かすかに震える。
柿谷が眼鏡を外し、レンズを拭き始めた。
「事の発端は、妹の友人の誘いでした。男女六人で、廃墟になった遊園地に肝試しに行くというんです。夏の深夜、若者が集まって怖い思いをする。よくある話です。私も、最初は軽く注意しただけでした。まさか、あんなことになるなんて……」
「廃墟の遊園地というと……」
私が呟くと、柿谷が口を挟んだ。
「まさか、久我山の『ドリームパーク』でしょうか?」
森山の顔がはっと上がる。
「ご存知なんですか?」
「オカルト業界じゃ超有名スポットですよ。二十年以上前に閉園した遊園地で、今でも廃墟マニアや肝試し連中がしょっちゅう侵入してる。ネットにも心霊写真が大量にアップされてるし、心霊スポットランキングでも常に全国トップテン入りです。ただ……」
柿谷が眼鏡をかけ直し、難しい顔で続けた。
「あそこには相当強い悪霊が住み着いているって言われてます。実際に霊障で死人が出たって噂も……」
「出たんです」
森山が、きっぱりと言った。
「妹と一緒に肝試しに行った六人のうち、三人が死亡しました。一人は心臓発作。一人は転落死。一人は……いまだに行方不明です」
店内に重い沈黙が落ちた。
ほうじ茶を啜る音だけが、やけに大きく響く。
「生き残った三人のうち、一人は入院しています。精神科の閉鎖病棟です。もう一人は、事故の翌日に自殺未遂を起こし、今は実家で療養中です。そして、私の妹は……」
森山は唇を噛みしめた。




