第二話 ダムに現れる首無し男の噂――調査開始
「首のない男性、ですか」
「そうです。初めはこの監視カメラに男性の姿が映ったので、すぐに駆け付けたんです。呼びかけても返事はなく、近づいたら首はないわ、驚いているとすっと目の前で消えるわ、もうパニックですよ。それから深夜の見回りの時には、かなりの確率で出会うようになりまして。あれは、間違いなくこの世のものじゃありませんでした。一応、会社に報告してお祓いをしてもらいましたが、効果はなく……」
田村の顔は青ざめていた。彼は本気で恐れている。
「わかりました。今日から一週間ほど、夜間を中心に調査をさせていただきます。管理事務所にはご迷惑をおかけしますが、ご協力をお願いします」
「はい、何なりと。ただ、お気をつけてください。何が起きるか……」
私は頷き、夕闇が迫るダム湖を見つめた。
調査は、その夜から始まった。
「こちらが『心霊対策課』で使用している暗視カメラです。それからこちらが人型センサーで……」
私が一週間ダムで調査することを『心霊対策課』に報告すると、今回依頼をくれた横日琢磨警部がやってきて、心霊を探すことのできるアイテムを持ってきて手伝ってくれることとなった。
さすがは『心霊対策課』の持ち物。
それも自分が持ってきたものよりも、遥かに新しく素晴らしい機能持ちばかりである。
これならば、すぐに見つけることができるだろう。
ダムの堤頂に三脚を立て、暗視カメラを設置する。湖畔の遊歩道には人感センサー付きの小型カメラを数台。管理事務所の一角を借りて、ノートパソコンで二十四時間の遠隔監視体制を敷いた。
ただ、私や横日にも仕事があるので、基本は午後九時から朝の六時までとなった。
一日目、二日目、三日目――カメラに映るのは、風に揺れる木々と、時折横切る野生動物だけ。温度計も異常値を示さず、録音機もノイズ一つ拾わない。霊能力者でもある横目警部と共に深夜に堤頂を歩いても、霊に出くわすこともなく二人の霊センサーに引っかからず、頼みの左腕のブレスレットも反応することはなかった。
「参ったな」
五日目の深夜、私と横目警部は管理事務所の仮眠室で、コーヒーを片手にモニターを睨んでいた。
画面には何の変化もない。
「今のところ反応なしですね」
疲れた声で横目警部が呟く。
「ここまで出ないのも珍しいですね」
長くモニターを見過ぎて目が痛くなったので、横目警部に断りを入れて洗面台へ移動する。




