第一話 呪いの骨董品――完
『……供物とされた母子の魂も、村人たちの魂も、これでようやく輪廻へ還ることができる。主よ、良い戦いだった』
ディストレイの重厚な声が、いつもより少しだけ柔らかく響いた気がした。
「ああ。お疲れ様、ディストレイ」
私はディストレイを光の粒子へと還す。役目を終えた結界は消えると、辺りの破壊された家や地面が急速に復元していき、数秒で元の状態へ。
「ふう。『サテライトビーム』がなければ大惨事だったな」
元通りになった家を見上げ、ホッとしていたら背後から私の名前を呼ぶ声が届く。
「紅さん!」
「ああ、井上さん。無事でよかった」
車が止まり中から井上が安堵した様子で近づいてくる。
「紅さん、その、大丈夫でしたか?」
「ええ。私は大丈夫です。ですが、皆さんに何の説明もしないまま、怖い思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
私が頭を下げると、井上は慌てて首を振った。
「い、いえ! そんな、謝らないでください。紅さんのおかげで、私たちは無事なんですよね? それに、何が起きたのか、まだよくわからないけど……すごく、恐ろしいものから守ってくれたんだって、なぜかわかるんです」
井上は家の方へ歩いていき、突然その場にしゃがんで何かを拾う。
それは焼け焦げたお札の一片だ。祖父が何十年も守り続けてきた封印の名残。
「祖父は、きっとこの家に何かがあるって知っていたんです。だから『開けるな』って言い続けて……私たちを守ろうとしてくれたんですね」
「ええ。お祖父様は、おそらくこの土地の呪いを一人で抑え続けてきたのでしょう。でも安心してください。もう、この土地は浄化しましたので」
井上の目に涙が浮かぶ。彼女は焼け焦げたお札を胸に抱きしめて、小さく「ありがとう」と呟いた。
次の日、いろいろと説明するため、再び彼女たちと会うこととなった。
今回は警察の『心霊対策課』からも一人来てもらい、“呪い”のことやパラサイトグリードのことも説明した。
半信半疑かなと思ったが、全員が納得してくれたことには驚いたが、実際に起こったことを目撃しているのだから、至極当然の反応であった。
そして『心霊対策課』から口止め料と、私からは鑑定した骨董品の買い取り額を彼女たちに渡した。
その額を見て、全員が目を大きくして震えて驚いていたのが印象的だった。
「それでは井上さん。また、何かありましたら、『アンティーク紅』を御贔屓に」
そして私は自分の店に戻るのだった。




