第一話 呪いの骨董品――戦闘終了
「エネルギー充填、百パーセント。目標、敵本体。お前たちの背景には同情の余地はないでもないが、今を生きる人々を脅かすのならば、私は容赦しない! さぁ、天に帰るがいい」
宝石から迸る雷撃が一点に収束し、凄まじい熱量と光量を湛えた巨大な閃光となって放たれた。
「穿てぇぇっ!!『裁きの雷光』!!」
単発で攻撃をする『裁きの雷弾』の上位互換で、膨大な雷のエネルギーを収束させてレーザービームを放つ最強の一撃の一角。
呑み込まれた敵は、極大雷球の熱量によって体ごと蒸発され跡形もなく消滅する、相手を癒す『浄化の炎』とは違い、相手を消滅させることを目的とする攻撃である。
一直線に亡霊たちを蒸発させながら疾走し、敵の核と思しき胸部を直撃。雷光は巨体を飲み込み背後の炎の結界に穴を穿つほどの威力を見せつけた。
「おいおい、嘘だろう! まだ存在しているのか」
あれだけの一撃を喰らってもなお、妊婦の亡霊はその存在を保っていた。しかし、体中からは大量の煙が上っており、触れたらそのまま倒れてしまいそうなほど、虫の息の状態だ。
あのまま消えればいいものの、それでもこの世界にその存在を保っているのは、それだけ亡霊が抱く負の念が突出していたのだろう。
「その執念は見事。だが、もう眠りにつく時間だ」
私はオリルフィアを高々と振り上げた。赤い炎を纏った刃が夜空の星々に混じり合うかのように輝き、ディストレイの巨体が空中へ踊る。
「一刀浄化!!」
豪快な斬撃が振り下ろされ、異形の女体が上下真っ二つに裂かれた。
焼け爛れるその巨躯から放出される負の奔流は、先刻までのような苦痛と憎悪の叫びではなく……
哀しみと悔恨のみが紡がれていく。
「……成敗」
私は操縦桿を握る手の力を緩め、静かに息を吐いた。
オリルフィアの刀身を覆っていた『浄化の炎』が、役目を終えたとばかりにフッと消える。
「翔太、下を見て」
カナリアの指差す先、異形の女体が消滅した地面には、十の小さな光の玉が浮かんでいた。淡く、温かで、まるで蛍のような光。それらはくるくると舞いながら、少しずつ空へと昇っていく。
「赤ちゃんたちの……魂か」
生まれることの叶わなかった十の命。母の胎内で捧げられた、無垢なる存在。彼らは怨念に染まることもなく、ただ純粋な光のまま、何百年もの間この呪いの核に囚われていたのだ。
「もう、大丈夫だよ」
カナリアがコクピットの外へ飛び出し、小さな手を差し伸べる。
光の玉たちは、彼女の周りを一度だけくるりと回ると、次々と夜空へと昇っていった。
星々の瞬きに混じり、やがて見えなくなる。




