第一話 呪いの骨董品――戦闘
「相棒、『浄化の炎』を頼む!」
『分かった』
輝きを放つ刀身に、赤い炎が燃え上がる。私はディストレイの右腕を振りかぶり、敵の巨体目がけて横薙ぎに斬りつけた。
「はぁぁっ!!」
炎を纏った真紅の刃が、異形の女体を斜めに斬り裂いた。腹から胸にかけて大きく開いた傷口に、浄化の炎が食い込む。負の感情を糧とする癒しの火が、パラサイトグリードの構成要素そのものを焼き尽くしていく。
「ギィィィィヤァァァァ!!」
十の女の苦悶が重なった絶叫が、結界内を震わせた。
「うおおおっ⁉」
声の中に宿った負の言霊が私の耳を通して脳へダメージを与えてくる。
思わず操縦桿から手を放し耳を塞ぐ。
その一瞬の隙を突かれて、パラサイトグリードの反撃を許す。裂けた腹から伸びていた無数の赤子の腕が、一斉にディストレイへと殺到する。それぞれの小さな手が、異様な力で装甲を掴み、引き千切ろうと食い込んでくる。
『主!』
「くっ、このっ……!」
視界が揺れる中、操縦桿を握り直し、思いっきり引いて小さな手から逃れようと後退する。
だが、足が動かない。
見れば、床下から噴出した黒い泥が、ディストレイの両足に絡みつき、固着させていた。
『主よ、足元だ!』
ディストレイの警告と同時に、泥の中から無数の人面が浮かび上がる。老若男女、村人たちの苦悶の表情だ。彼らは口々に恨み言を呟きながら、ディストレイの装甲を腐食させていく。
「なっ、何⁉ 装甲が……くそっ、村人たちの霊まで取り込んでいるのか!」
『むう、『浄化の炎』を使って鍛えた装甲がこうも無残になるとは……だが問題ない。ふん』
ディストレイが力を込める。腐食した部分から『浄化の炎』が溢れ出して、元通りの装甲に復元する。
「よし、これなら何度壊されても復元できるな。次は村人たちの霊ごと凍らせる。いいな!」
『もちろんだ!』
私は操縦桿を強く握りしめ、両足のペダルに意識を集中させた。
「君たちの時間を止める! 『永久の氷』!!」
ディストレイの青い両足が、深く輝きを増す。装甲の隙間から零れる青白い光が、絡みつく黒い泥を照らし出した。次の瞬間――
パキィィィン!!
両足を中心に、絶対零度の波動が迸った。黒い泥が一瞬で白く凍りつき、その中に浮かんでいた無数の人面も、苦悶の表情のまま氷像と化す。呪いの泥が、ただの氷の塊へと変貌していく。
「いまだ!」




