第一話 呪いの骨董品――顕現! ディストレイ&パラサイトグリード
ディストレイが返事をした時、私の上空から『サテライトビーム』が照射された。
「さすが清水さん。行くぞ、ディストレイ。まずはこの家を中心に結界を張るぞ」
『承知した』
ブレスレットが砕かれ三つの球が私を中心に三角形を作ると、その真下には巨大な魔方陣が展開された。赤い幾何学模様が畳を焼き、壁を貫き、家全体を包み込んでいく。天井を突き破って噴き上がった炎の柱が、空高く伸び、赤いドーム状の結界となって家と庭を覆い尽くした。
続いて黒い雷雲が結界の上部に渦巻き、稲妻が一斉に降り注ぐ。黄色い光が赤いドームに溶け込み、金赤色の堅牢な檻へと変貌する。そして、天を衝く炎の柱が一瞬にして凍りつき、透き通った氷の柱へと変わった。
パキィィィン!!
氷の奥で、一対の深緑の瞳が光る。柱が内側から爆ぜ、飛び散る結晶の中から、真紅の装甲に金の縁取りを施された巨神がその姿を現した。
「召喚! 『ディストレイ』!」
私は手を叩き、ゲートを開いてコクピットへ跳躍する。見慣れた操縦桿を握り、ホログラムの照らす空間で深く息を吐いた。
「翔太、下を見て!」
コクピットで私のサポートをしてくれている妖精カナリアの声で、私はスキャナを足元へ向けた。隠し部屋の床が、内側から膨れ上がっている。無数のお札が次々と剥がれ落ち、壁に亀裂が走っていた。
ドゴォォォン!!
隠し部屋の床が爆発した。飛び散る木片と札の中から、黒い泥のようなものが噴出する。それは瞬く間に膨れ上がり、家の一階部分を飲み込みながら、異形の姿を形成していった。
十の妊婦の怨念。
村一つを滅ぼした呪い。
それらがパラサイトグリードと融合し、今、完全な実体を得て顕現する。
その姿は、巨大な女性の上半身だった。ただし、腹は裂け、そこから無数の赤子の腕が蠕動しながら伸びている。顔は十の女の苦悶が重なり合い、絶え間なく変容を続ける。目という目からは血の涙が流れ、口という口からは生まれることのなかった赤子の産声が、不協和音となって迸る。
『これが……数百年前に封印された負の念を吸収したパラサイトグリードの姿』
カナリアが息を呑む。
「主よ、奴はまだ完全には目覚めていない。今のうちに仕掛けるべきだ」
「ああ。一気に畳みかける!」
私は操縦桿を前に倒した。
ディストレイの巨体が踏み込み、背中のバーニアから暴れだす『浄化の炎』の推進力を得て飛び込む。
「くっ!」
凄まじいGを受けながら、操縦桿の簿ランを押すと、右腕の甲からオリルフィアが飛び出す。




