第一話 呪いの骨董品――行動
彼女の声が震える。当然だ。遺品整理に来ただけの一般人に、そんなことを突然告げられて平静でいられるはずがない。
「かなり。お祖父様が生きていらっしゃったら、どういう経緯であんなものを手に入れ、封印したのか聞いてみたいものですよ」
「それほどのものですか」
「はい。詳しい説明をしてあげたいのですが、残念ながらあの封印が解けそうなので後ほど説明をします。今は、ご家族全員と一緒に、すぐにこの家から離れてください。できるだけ遠くに」
「で、でも、それじゃあ……」
私は彼女の目をまっすぐに見据えて微笑む。
「井上さん、あなたは運がいい。私は鑑定士ではありますが、副業で『心霊調査員』もやっているんです。つまり霊能力者です。こういった霊や呪いの類に関しては、鑑定士と同じでプロです。ぜひ、私に任せてください」
私の左腕では、ブレスレットの三色が警告するように明滅を繰り返している。その光が、彼女の目にも映ったようだった。
「……わかりました」
井上は青ざめた顔で頷き、廊下の向こうへ走っていった。その後に私も続いて軽く家族に説明をする。
私と彼女の真剣な眼差しが、ただ事でないと理解してくれたようで、すぐに必要最低限の荷物だけを手にして玄関へ向かう。
私も足早に玄関へ向かい外に出る。庭の柿の木が風に揺れ、熟した実を一つ、地面に落とした。その乾いた音だけが、やけに耳につく。
井上一家の乗用車が坂を下りていくのを確認した私は、すぐに『心霊対策課』に連絡を入れる。
『はい。こちら『心霊対策課』の清水です。何かごよ――」
「清水さん⁉ これはラッキーだ。心霊調査員の紅です。これより、ディストレイを召喚しますので、『サテライトビーム』の準備をお願いします」
『あー、その、お久しぶりです、紅さん。もしかして、かなり切羽詰まってます?』
「ええ。今すぐ……」
『わ、分かりました。五分――」
「二分」
『……はあああああ。いやいや、いくら何でもそれは……』
「一分三十秒で」
「あああああああ、もう、分かりました。一分三十秒だけください。どうにかして、『サテライトビーム』を照射させてみせますよ。それで照射する場所は……』
「スマホの位置情報を参考にしてください」
『ああ、もう、だそdじゃsdks:dかおdこぱs』
通話が切れた。
最後の方は意味不明な羅列が聞こえたが、きっと空耳だろうと思うようにした。
清水の腕を信じて再び家の中へ戻り隠し部屋の前まで来た私は、息を整え隠し部屋の壁に向き直った。
「……よし、準備はいいか、ディストレイ。『サテライトビーム』が届き次第、行動に移るぞ」
私は左腕のブレスレットを握りしめた。
三色の光が指の間から漏れる。
『もちろんだ』




