第一話 呪いの骨董品――決断
『術者自身が封じたのだ。おそらくは、自らの生み出した災厄に恐れをなしたのだろう。呪いの儀式を執り行った祈祷師か、あるいは村を滅ぼすよう命じた領主か。彼らは、この呪いがやがて制御不能になることを悟り、せめてもの罪滅ぼしに封じ込めた。この無数の札がその証拠だ。そして、寄生したパラサイトグリードごと封印したことで、奴は成長することができず霊体のまま長い年月を過ごすこととなったというわけだ。しかし――』
「その札も古びて効力が落ちてしまい、封じられていたパラサイトグリードも半ば目覚めつつあるのか。この気配にパラサイトグリードが混じっているのは、そういう理由か」
『主よ、提案がある』
ディストレイの声が、一段と低く厳しいものに変わった。
「言ってくれ」
『今すぐこの家の住人を避難させ、『サテライトビーム』と我の力で結界を張る。そして、この災厄が完全に目覚める前に、我が力で土地ごと浄化をするべきだ。このまま放置すれば、いずれ封印は完全に破られる。そうなれば、被害はかつて滅びた村だけでは済まない。さらに、これだけの負の念をパラサイトグリードが一気に吸収すれば、霊体から一気に受肉する可能性もある今の状態のまま倒せるのなら、そうした方が断然いい』
私は唇を噛みしめた。
確かにディストレイの言う通りだ。
すぐ『心霊対策課』に連絡をして『サテライトビーム』を照射してもらえば、この家が壊れても修復できる。ただ、この場所は封鎖していないため、ビーム内とはいえ周囲に何かしらの影響が起こるかもしれない。
「迷っている時間はないな。すぐ実行する」
『うむ。それがいいぞ、主。奴もまた、我々の存在に気づき始めている』
ブレスレットの熱が、一際強く脈打った。
壁の向こうの気配が、先ほどよりも濃くなっている。
封印されている存在が目覚めかけているのだ。
私は決意を固め、隠し部屋の扉を開けた。廊下で待っていた井上が、私の顔を見て不安そうに目を見開く。
「紅さん……顔色が……」
「井上さん、急ぎお伝えしなければならないことがあります」
井上の顔がこわばった。私のただならぬ様子に、ただごとではないと察したのだろう。
「な、何があったんですか?」
「落ち着いて聞いてください。まず、開かずの間の先にはかなり濃い“呪い”が蔓延しております。それは開かずの間のさらに奥の一角に封印されている壺から溢れ出ています。そこには非常に危険なものが封じられています。お祖父様が『開けるな』とおっしゃったのは、このことです」
「危険なもの……ですか?」




