第一話 呪いの骨董品――呪いの儀式
「どういうことだ?」
『ふむ……それを語るには少しこの土地に刻まれた歴史を紐解くしかないな』
「歴史……ちょっと待ってくれ。相棒には、この土地の歴史が分かるのか?」
『うむ。土地とリンクすることで、過去の記憶を読み取ることができる』
「それは知らなかった……なら、頼む」
『今から数百年ほど前、この地では大規模な呪いの儀式が執り行われたようだ』
私は息を呑んだ。ブレスレットが、一段と強く熱を帯びる。
「呪いの儀式……」
『そうだ。その時に使われた供物は十人の妊婦だった。臨月を迎えた女たちの腹を裂き、胎児ごと生き血を大地に捧げる。母体の絶望と、生まれ出ることの叶わなかった命の怨念――それらを一身に集めて、呪いへと転化させる、この上なく邪悪な術だ』
背筋を冷たいものが走る。札で覆われた壁の向こうから、まるでその言葉を肯定するかのように、かすかな地鳴りと圧迫感が伝わってきた。
「コトリバコに似てはいるが、あれよりもかなり強力だな」
『何だ? そのコトリバコというのは?」
ネット掲示板に投稿された怖い話の一つである。
あれは、からくり箱に動物の雌の血を入れて満たした後に、子供の死体の一部を入れて作る呪物だったはずだ。
呪いの力は入れる子供の数によって変化するようで、八人目になると呪う側にも危害が及ぶ。
呪いの対象は、子を取るという意味から、子供と子供を産むことができる女性に限られているらしい。
「だが、この話は実際にはなく創作物だ。だからこそ人気を博したのだが……まさか、母親と生まれてくる子供を犠牲にするとは……で、その後はどうなった?」
『術の効果は絶大だった。呪いの対象となった小さな村は、一夜にして全滅。老若男女、家畜の一匹に至るまで、苦しみ抜いた末に死に絶えたという。そして、呪いはそれだけでは終わらなかった』
「……この土地まで呪われたのか」
『そうだ。死霊となった村人たちの無念と、供物とされた母子の怨念が混ざり合い、この地を何百年にもわたって穢し続ける呪いの源となった。やがてその負の塊に惹かれてパラサイトグリードが寄生し、今や切り離せぬ一体の災厄と化している』
私は拳を握りしめた。
十人の妊婦。
そして宿っていた命が一人だと仮定したとして、最低でも生まれるはずだった十の命。そして、理由もなく殺された村の人々。それらすべての絶望と苦痛が、この壁の向こうで眠っている。
「なぜ封印されているんだ? これだけの力があるなら、いつ受肉してもおかしくないはずなのに、霊体だなんてありえないだろう」




