第六話 白鷺会若頭・真田圭吾―後日談2
その時、コピー機が唸り始めると一枚の紙を吐き出した。
ファックス機能が働いたのだ。
宛先を見て、私は納得する。
「ちょうどいいタイミングだぞ、圭吾。柿谷からだ」
それは柿谷からのファックスだった。
どうやら事件後も彼は紫の女について調べてくれていたようだ。
『翔太へ。紫の女について、それらしい記事を見つけた。詳細は不明だが、読んでみてくれ』
私はその記事に目を通した。地元の地方紙の古い記事だった。日付は四十年前。内容はこうだった。
『〇月〇日、〇〇町の山中で若い女性の行方不明事件が発生した。女性は二十五歳の会社員で、友人と山登りに来ていたが途中で逸れたまま見つかっていない。警察と消防が三日間にわたり捜索したが、手がかりは見つからなかった。女性は紫色の服を好んで着ていたという』
「紫色の服……」
圭吾が呟く。
「おそらくあの女ですね。しかし、行方不明になったのは山の中だとするなら、あのトンネルとは関係ないような気が……」
「そうとは限らないみたいだぞ。ほら、記事の最後に気になることが書いてある」
私は記事の末尾を指さした。
『なお、女性の行方不明現場は現在使われなくなった旧トンネルの近くであり、当時から地元では不審な噂があったという』
「旧トンネルの近く……」
「ああ。彼女は山登りの途中であのトンネルに迷い込んだのかもしれない。そして、そこで何かに襲われた。それが人間か、それともクマか、あるいは山で彷徨う幽霊なのか、それは分からない。だが、不運にもそこで命を落としてしまい……」
「パラサイトグリードに憑かれた……ということですか」
「あくまで私の想像だから確証はない。柿谷の記事にもそれ以上の詳細はないから」
「そうですか……」
圭吾は少し残念そうな顔をしたが、すぐに表情を引き締めた。
「ですが、あの女は最後に笑っていました。あれは救われた顔だった。それだけでも、俺たちがやったことは無駄じゃなかったと思えます」
「戦ったお前が言うなら、そうなのだろうな」
私は記事をテーブルに置き窓の外を見た。
街は年末の光に包まれている。
あの女も今頃は安らかな場所にいるのだろう。
「謎が残るのも心霊の醍醐味だな」
「ええ。そうですね」
圭吾が小さく笑った。
「それで師匠。今日はもう一つ報告があって」
「何だ?」
「実は……」
圭吾が少し照れくさそうに頭をかいた。
「審査が通りまして、再び『心霊対策課』から依頼を受けられるようになりました。俺がテルスディアでパラサイトグリードを倒せたことが理由だそうです」




