第六話 白鷺会若頭・真田圭吾―後日談
圭吾が槍を引き抜くとパラサイトグリードの残骸が光の粒子となって消えていく。そして、その中から一人の女性の魂が現れた。
紫の服を着た若い女性。彼女はもはや邪悪な気配を感じさせない。ただ静かに圭吾を見つめていた。
「あなたは……」
女性は何も言わずに圭吾に微笑んだ。
そして、深く一礼すると天へと昇っていった。まるで長い呪縛から解放されたかのように、その魂は安らかな表情をしていた。
「やったな、圭吾」
私が近づくと圭吾はテルスディアの背から降りて地面に立った。
彼の顔には疲労の色があったが、その目には確かな達成感が宿っていた。
「師匠……やりました」
「ああ。お前の勝ちだ」
「師匠がいなければ、俺はまた鍵を握ることすらできなかった。感謝してます」
「礼はいい。それより、お前のディメンダムは相変わらず派手だな。見せつけられたよ」
「照れますね」
圭吾が笑った。テルスディアもまた光の粒子となって消えていく。その姿を見送りながら、私は今回の事件が終わったことを実感した。
「さあ、帰るぞ。部下たちも待ってる」
「はい」
任務を終えた二人はそれぞれの家へ帰っていくのだった。
あれから一週間が過ぎた。
十二月も終わりに近づき街はすっかり年末の慌ただしさに包まれている。私はいつものようにアンティーク紅のカウンターで古い品の整理をしていると、店のドアベルが鳴った。
入ってきたのは黒いコートを着た真田圭吾だった。
「師匠、ご報告に参りました」
「律儀だね。そんなの、電話一本で済む話なのに」
私は奥からコーヒーを持って彼に差し出す。
「ありがとうございます。あの時行ったメンバーは先週から復帰しましたし、宮下もすっかり元気になりました。今は全員俺の手足として働いてもらってます」
「そうか。それは何よりだ」
私は安堵の息を吐いた。
あの異界での戦いが無駄ではなかったことを改めて実感する。
「それで師匠、実は……」
圭吾が少し言いにくそうに切り出した。
「紫の女のことだが……まだ正体がわからなくて。あの後、部下を使って調べてみたんですが、該当する失踪者も自殺者も見つからなかったんですよ」
「そうか……」
「あのトンネルで何があったのか、なぜあの女がそこに縛られていたのか。何もわからないままです」
「謎は残るな」
私は腕を組んだ。
あの女の魂が最後に見せた安らかな微笑み。
あれは間違いなく解放された者の顔だった。
しかし、彼女が誰だったのかはわからないままだ。




