第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――テルスディア顕現
圭吾は鍵を受け取り、その手のひらで握りしめた。
真鍮の鍵に埋め込まれた赤い宝石が、かすかに脈打つように輝いている。
「師匠……」
「久しぶりに見せてくれ。お前の力を」
その言葉に、圭吾の目が変わった。迷いが消え、強い意志の光が宿る。彼は鍵を胸の前に掲げた。
「来い、テルスディア!」
鍵が激しく輝き周囲の空間が歪む。圭吾の体から光が溢れ出し、彼の意識が精神世界へと引き込まれていく。
圭吾の意識が飛んだ先は果てしない白い空間だった。そこに、一柱の巨神が立っている。
その姿は、まさに大地を駆ける獣のようだった。四足歩行の巨体に、黄金の毛皮が光を纏っている。獅子のたてがみ、牛のような顔、狼のような鋭い牙、そして知性の光を宿した深緑の瞳。たてがみは風もないのにたなびき、四肢には鋭い爪が備わっている。背中には一対の翼のような装飾があり、尻尾の先は三つ又に分かれていた。
『圭吾よ、久しいな』
テルスディアの声は低く、大地を震わせるような響きを持っていた。
「テルスディア……すまない、長い間放っておいて」
『気にするな。お前にはお前の戦いがあったのだろう。だが、今こうして再び会えた。それで十分だ』
「ああ。また一緒に戦ってくれるか」
『当然だ。我はお前のディメンダム。お前が望む限り、何度でもこの地に顕現しよう』
テルスディアの黄金の毛皮が光り輝く。その光が圭吾の体を包み込み、二人の魂が再び一つになる。
現実世界に戻った圭吾の体から、眩い光が放たれた。異界の闇を一瞬で塗り替えるほどの輝き。紫服の女だったものが光に照らされ、たじろぐ。
「来い、テルスディア!」
圭吾の叫びとともに、光の柱が天を貫いた。
そしてその光の中から、黄金の巨神が姿を現す。
神の剣の力によって、異界に亀裂が入り、やがて維持できなくなり破壊。
現実世界へ帰還する。
そして、古びたトンネルの外には、受肉したパラサイトグリード。
そして――
大地を駆ける者、テルスディア。四足の巨体が大地を踏みしめ、その咆哮が空間を震わせた。
『我が名はテルスディア。大地を駆け、闇を祓う者。圭吾と共に在り続けるディメンダムなり』
その声は静寂の山全体に響き渡り紫服の女だったものが思わず後退る。
テルスディアの深緑の瞳が、まっすぐに怪物を見据えていた。




