第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――圭吾VS紫色の女
一方圭吾は紫の女と対峙していた。
「お前は、俺の舎弟たちに何をした」
圭吾の声は静かだが、怒りが込められていた。
紫の女は答えない。
代わりにその体をゆっくりと揺らめかせる。
霊体と実体を交互に切り替えながら、圭吾の死角へと回り込もうとしている。
「当然のように、半霊体か」
圭吾は目を細め女の動きを追った。
彼の動体視力は人間離れしている。
霊体と実体が切り替わる瞬間のわずかな間を、彼は見逃さない。
女が一瞬で間合いを詰め、鋭い爪を圭吾の首元へと振るう。しかし圭吾は上半身を軽く反らしてこれをかわし、そのまま女の手首を掴んだ。
『⁉』
圭吾の拳が女の腹にめり込む。
紫服の女は苦悶の表情を浮かべながら、すぐに霊体へ切り替える。
「甘いんだよ」
しかし、圭吾が霊体の状態の紫服の女の手首を再び掴むと、彼女は焦りだす。
さらに引き寄せ無防備な胸部へ拳を突き刺す。
『グッ……」
女は苦し気な声を漏らして後退する。
ディメンダムの契約者である彼は、自身で触れた物体は霊体にダメージを与えられる、という力を得ているのだ。
今度は実体に切り替わった紫服の女は、回し蹴りを放ってくる。圭吾はそれを片腕で受け流し、逆に肘を女の顔面に叩き込んだ。
「まだまだ」
女の攻撃はすべて圭吾に届かない。かわされ、弾かれ、いなされ逆にカウンターを喰らう。紫の女は徐々に劣勢に追い込まれていた。
「どうした。その程度か」
圭吾が一歩踏み込み女の胸元に正拳突きを放つ。
その一撃は霊体と実体の境目を正確に捉え、女の体を大きく吹き飛ばした。女は壁に激突し、ずるずると崩れ落ちる。
「お前のような化け物に、俺の舎弟たちは殺せない」
圭吾は静かに構えを解かずに言った。
その目には強い意志が宿っている。
彼はこの戦いを、自分の力で終わらせるつもりなのだ。
圭吾は拳を握りしめ再び女へと向かっていった。
『アアアアア!』
圭吾の拳が虚空を切る。
目の前で紫服の女が消えたのだ。
「消えた⁉ どこに」
周囲を見回すと、数メートル先に紫服の女が再び姿を現す。
どうやら接近戦では不利と判断したのか、距離をとったのだ。
「ちっ……」
圭吾は小さく舌打ちした。
間合いを詰めようにも、女は常に一定の距離を保ちながら圭吾の周囲を回り込むように動く。まるで圭吾をからかうかのように、不気味な笑みを浮かべながら。
「逃げるのか」
圭吾の声に苛立ちが滲む。
しかし次の瞬間、彼はスーツの内側から一丁の拳銃を取り出した。
黒い銃身が異界の薄闇に鈍く光る。




