第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――魂解放
私は圭吾に背を向け、異界の奥へと走り出した。後ろからは圭吾の気配と紫服の女の気配がぶつかり合うのを感じる。
戦いが始まったようだ。
「頼むぞ、圭吾」
私はそう呟き、異界の中を走り続けた。
異界の中は迷路のようだった。
ねじ曲がった壁が行く手を阻み、同じような景色がどこまでも続く。しかし私はディストレイの力を借りて、魂の気配を探した。
『右側から気配を感じる』
ディストレイの先導を聞きながらしばらくすると、また一人、蹲っている男を見つけた。白鷺会の若い団員だ。
「見つけた」
私は彼に近づき『浄化の炎』で拘束の鎖を焼いた。
男の魂は光に包まれ、現実へと還っていく。
「これで二人目。残り一人だ」
最後の一人を探してさらに奥へと進む。だが、この先は特に迷路が入り組んでいて、何度も行き止まりに阻まれた。
「くそ、また行き止まりか」
『むう。これで七回目か。主よ、運が悪いのではないか?』
私は苛立ちを覚え始めた。
このままでは時間がかかる。
「……ふふ。そうだ、そうだよ。律儀に進むから大変なんだよ」
『あ、主?』
ディストレイが若干引いている気がするが、そんなの関係ない。
この迷路は私を怒らせた。
それが悪いのだ。
私は右手に力を込めた。
『浄化の炎』を押し付けて行き止まりの壁を破壊しようと試みる。
ジュワッ! 壁が真っ赤に溶けて、向こう側への道が開けた。
「こうすればいいんだ」
胸の奥がスカッとした私は、満面の笑みで次々と壁を破壊しながら直進していく。
迷路の壁は『浄化の炎』に触れた瞬間に浄化され、異界そのものが私の力に怯んでいるようにも感じられた。
「あはははは、楽しい、楽しいね」
やがて、迷路の最深部で最後の一人を見つけた。
彼は他の二人よりも拘束が強く、全身を黒い鎖でぐるぐる巻きにされていた。
「これはまた……しっかりしろ。今助けてやる」
私は鎖を『浄化の炎』で焼き切った。鎖は悲鳴を上げるように溶けていき男の魂が解放される。
「あ……ああ……」
「もう大丈夫だ。君は先に戻っていたまえ」
男の魂が光に包まれ現実へと還っていく。これで三人全員を救出した。
「よし、全員だ」
私は来た道を駆け戻った。
圭吾の戦いがまだ続いているはずだ。
異界の空気が大きく揺れ、圭吾の気配が遠くで動いているのを感じる。
「さて、どうなっているかな」
遠くで圭吾と紫服の女との戦いが見える。
私は圭吾の戦いを眺めながら、ゆっくりと近づいた。




