第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――二手に
私たちは並んで歩き出した。
足音が反響する。
しかし、その反響が少しずつずれて聞こえる。まるで、もう一人誰かが私たちの真似をして歩いているかのように。
「……師匠」
「ああ」
視線の先にかすかな光が見えた。
私たちはその光に向かって歩いた。
光に近づくにつれ、人らしき影が浮かび上がる。
「誰かいる……」
圭吾は走り出す。
その後を私が続く。
光の正体は蹲る一人の男だった。
白鷺会の若い団員だ。
魂だけの存在となった彼は、虚ろな目で虚空を見つめていた。
「おい、大丈夫か!」
圭吾が声をかけると男はびくりと反応し、ゆっくりと顔を上げた。
「じゃ、若頭……?」
「そうだ。真田圭吾だ。わかるか?」
「若頭……なんでここに……」
男の声はかすれ、まるで遠くから聞こえてくるかのようだった。
「助けに来た。他に二人はどこにいるかわかるか?」
「わからないです……気づいたら、ここに……みんなとはぐれて……」
「そうか。無理に思い出さなくていい。今お前を現実に戻してやる」
圭吾が私を見た。
「師匠、お願いします」
「任せなさい」
私は右手に『浄化の炎』を灯した。
真紅の炎が異界の闇を照らす。
男の魂には黒い鎖のようなものが巻きついていた。これが彼を異界に縛り付けている拘束具だ。私は炎を鎖に触れさせた。
ジュッ……という音とともに鎖が浄化され、男の体がかすかに光を放ち始めた。
「うわっ……」
男の魂がゆっくりと浮かび上がり、現実世界へと引き戻されていく。
やがてその姿は完全に消えた。
彼は今頃、ベッドの上で寝ている自分の肉体に戻っているはずだ。
「これで一人目だ。残り二人を探すぞ」
「師匠、あれを」
圭吾の声が鋭く響いた。私は振り返った。
そこには紫の服を着た女が立っていた。
異界の薄闇の中で、その姿は現実よりもはっきりと見える。青白い顔に不気味な笑み。長い黒髪が風もないのに揺れている。
「来たか」
「師匠、ここは俺に任せてください」
「……理由は?」
「魂となった部下たちを元に戻せるのは、師匠の『浄化の炎』しか無理です。であるなら、部下二人を師匠が、あの紫服の女は俺が対応する。そっちの方がいいと思いますが」
圭吾の提案は的を得ている。本当なら自分で部下たちを助けたい、と思っているはずだが能力的に私の方が適任だと判断したようだ。
こんな状況下でも冷静に判断できるとは大したものだ。
まぁ、本音は部下の命を脅かしたこの女と戦うことを望んでいるようだが。
「分かった。ここは任せた」
「お任せを」




