↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
151/164

第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――遭遇

 私たちは慎重に歩を進めた。

 トンネル内は完全に暗闇で、ヘッドライトの光だけが頼りだ。壁は古びたコンクリートで、ところどころにひび割れが見える。

 天井からは水滴が落ち、その音がやけに大きく反響する。

「師匠、あれを見てください」

 圭吾がライトで壁の一点を照らした。

 そこには無数の落書きがあった。

『ここから出して』

『助けて』

『もう帰りたい』

 どれも若者たちがふざけて書いたものだろう。しかし、その中に一つだけ異質なものがある。

『紫の女に会った。明日、私は消える』

 震える字で書かれたそのメッセージ。

 日付は半年前。

 おそらく、あの動画の投稿者だろう。

「やはり、ここであの動画は撮られたんだな」

「ええ。それに……」

 圭吾が指さした先落書きの下の地面に何かが落ちている。近づいて拾い上げると、それは小さな携帯電話だった。画面はひび割れ、バッテリーはとうに切れている。

「これは……」

「おそらく投稿者のものだね。回収しておこう」

 私は携帯電話をポケットにしまった。その時だった。

 カタン。

 トンネルの奥から、小さな物音が聞こえた。まるで何かが倒れたような音だ。

 私は反射的に身構えた。

「圭吾」

「わかってます」

 私たちは背中合わせに立ち周囲を警戒した。

 ヘッドライトの光がトンネルの奥を照らす。

 しかし、そこには何も見えない。

 ただ闇が続いているだけだ。

「気のせいか?」

「いや……」

 圭吾が首を振る。

「今、確かに何かの気配を感じた。それも、かなり近くに」

 私たちは再び歩き出した。トンネルの中腹に差し掛かった時、私はふと違和感を覚えた。

 足音だ。

 私たちの足音以外に、何かがついてきている。

「圭吾、足音を止めろ」

 私たちは同時に立ち止まった。

 すると、遅れて聞こえる足音。

 コツコツ、コツ。

 それは私たちの足音を真似るように、一定のリズムで響いている。

「後ろだ」

 振り返る。

 ヘッドライトの光がトンネルの入り口方向を照らす。

 しかし、そこには誰もいない。ただ私たちの影が長く伸びているだけだ。

「気のせい……ではなさそうですね」

「ああ。何かが私たちを尾行している」

 その時、カナリアが私の耳元でささやいた。

「翔太、上」

 私はとっさにヘッドライトを天井に向けた。

 その瞬間、光の中に一瞬だけ何かが映った。

 紫の服、青白い顔。

 そして、こちらを見下ろす不気味な笑み。

「いた!」

 しかし、次の瞬間にはもう消えている。天井には何もない。

 ただ古びたコンクリートがあるだけだ。

「師匠、今の……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。