第六話 白鷺会若頭・真田圭吾――廃トンネル
「これは……」
紫の服の女。
四人の若者。
最後に後方を向いた時、女は確かに一人の若者の肩に手を置いていた。そして動画が途切れた瞬間、その若者の姿はフレームから消えていた。
「人が消える……というのは、これか」
私はスマートフォンを手に取り、柿谷に電話をかけた。
「見たか?」
「ああ。最後の瞬間、一人が消えている。あの紫の服の女が関係しているのは間違いない」
「だろ? 俺も何度も再生して確認したんだ。動画が途切れる直前、四人いたうちの一人が消えてるんだよ」
「あの動画はどこで撮られた?」
「詳細は不明だが、噂ではあの廃トンネルだって言われてる。投稿者も特定できてない。ただ、この動画がアップされたのは半年前で、それ以降投稿者の消息は不明だそうだ」
「半年前……」
私は時系列を整理した。
半年前に動画が投稿され、投稿者は消息不明。そして今白鷺会の若い連中が同じトンネルで心霊現象に遭い、三人が昏睡一人が錯乱。
「柿谷、さらなる情報を集めてくれ。特にあの女についてだ。紫の服の女が過去に何かあったのか、あのトンネルで何が起きたのか」
「了解。俺も本気で調べるぜ。何かわかったらすぐ連絡する」
「頼んだ」
電話を切り、私は窓の外を見つめた。
十二月の冷たい風が、店の前の木枯らしを舞わせている。
(紫の服の女……そして人を消す力。これは間違いなくパラサイトグリードの仕業だ)
私は準備を始めた。
今夜圭吾と共にあの廃トンネルへ向かう。
その前に、できる限りの情報を集めなければ。
カナリアが私の肩に乗り、小さな声で言った。
「翔太、また厄介なことになりそうだね」
「ああ。だが、今回は圭吾もいる。それに……」
私は内ポケットの鍵に触れた。
「あいつにも、そろそろ自分の力で戦ってもらわないとな」
「ふふ、そうだね。彼も契約者としての自覚を持つ頃だよ」
私は小さく頷き、窓の外に広がる夕暮れの空を見上げた。
時刻は夜の十一時。
十二月の冷たい空気が、廃トンネルの入り口に立つ私の頬を容赦なく刺した。場所は山間部の旧道沿い。新しいバイパスができてから完全に放置されたこの道は、落ち葉と枯れ枝に覆われ両脇の雑木林が異様な圧迫感を放っている。トンネルの入り口は巨大な口を開けた獣のように暗く、中からはひんやりとした風が絶え間なく吹き出していた。
ヘッドライトの光を頼りに私は入り口付近の地面を観察した。かすかに残るタイヤの跡。おそらく宮下たちが乗ってきた車のものだろう。




